よくやった。 ページ33
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「……陽依、ちゃん」
びく、と肩を揺らした陽依さんは、まだ徹と目を合わせようとしない。
徹は恐る恐る、といった様子で陽依さんの方を向くと、静かに頭を下げた。
「……ごめん。俺、付き合えたからって、浮かれてた。本当に、ごめん」
全てを詰め込んだようなその謝罪は、陽依さんの心を動かすには十分だったようで。
「私の方こそ、ごめん。及川君、顔、上げて……?」
いつの間にか大人しくなった後ろの三人に安心しながら、二人を見守る。
「あ、の……」
徹は言葉に詰まり口をつぐんだ後、意を決したように陽依さんを見据え、言った。
「俺さ、陽依ちゃんが、いないと、駄目みたい。だから、その……」
俺たち、やり直せませんか?
その言葉に、思わず小さくガッツポーズをとる。
隠れヘタレの割にはよく頑張った。
私たちの努力は報われる。
陽依さんは感極まったように何度も頷いていた。
徹はここからでもわかるほど安心しきった顔をして、陽依さんを、抱きしめた。
「好き、陽依」
陽依さんも、徹の背中に腕を回して、言った。
「……私も、好き」
そのまま二人の距離が近づく。
「はい帰りましょう。回れ右」
「これほど不愉快な人の幸せある?」
「何が悲しくて高校最後の夏に他人の青春見せつけられなきゃならないんだよ」
「実に不快だった。主に及川が。いや全て及川が」
そう言いながらも三人の顔は晴れ晴れしていた。
なんだかんだ仲良しじゃん。
いや、ただうじうじから解放されるのが嬉しいだけかもしれないけど。
とりあえず、いいチームメイトを持っているようで安心した。
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作者名:にはろ | 作成日時:2020年6月20日 10時