さっちゃんち。 ページ22
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数秒後、何故か顔を顰めながら口を開く。
「……ウチ来るか」
「ん？あ、いや今日はもう帰ろうと思ごめんごめん行く行くから」
じいちゃんちの隣にある佐久早家にお邪魔すれば、佐久早ママが出てきた。
「お邪魔します……」
「あらっ、もしかしてAちゃん？びっくりしたわー、美人になって、お嫁さんに」
「来ない」
最早会う度に恒例となった佐久早ママの謎求婚を華麗に遮ると、さっちゃんはどすどすと階段を上っていってしまった。
反抗期が長引いているのか？
なんだ、告ってもないのにフラれたってこういうこと？
唖然としているとさっちゃんが階段の上からひょっこり顔を出して早く来いよといわんばかりに睨んでくる。
靴をそろえて再びお邪魔しますというと、佐久早ママが懲りずにまた「あんなだけど、優しい子だから貰ってあげて♡」とだけ言ってキッチンの方へパタパタと去っていった。
私が貰うの？貰ってはくれないんですね？
階段を上がるとさっちゃんが廊下で待っていた。
その手にはどこから取り出したのかコロコロが握られていて、全身満遍なく転がされる。
コイツに女子への気遣いはない。
なんでモテんのマジで。
「ぶっ」
そして例によって容赦なくアルコールをぶっかけられる。
いつものことなので大人しく両手を上げてやり過ごした。
さっちゃんの部屋にはテレビがあって、昔からじいちゃんちに来た時は二人でバレーの試合を見たものである。
だってうちらの兄姉たちずっとゲームしてんだもん。退屈してたら誘ってくれた。
今回も無言でそれが行われようとしている。
「……何か見たいのあんの」
「さっちゃんのインハイの決勝」
「ない」
「なんで！」
前は喜んで自分の試合のビデオ見せてくれたのに中学くらいからめっきり見せてくれなくなった。
渋々別のものを考える。
「えー……じゃあオリンピック見よ」
そう言えば録画から選んでつけてくれた。
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作者名：にはろ | 作成日時：2020年6月20日 10時
