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彼が目の前までくると、ユリは「ハリー」と「えっと」「あの」を何度か繰り返した。
昨日の晩からついさっきまで、何を言うかずっと考えていた。
けれどそんなもの、もう全部忘れてしまって、ユリは結局ハーマイオニーとルーピンに話した記憶そのままに、ハリーに事実を全部話した。
そして、最後に思い出したように「ゴメン」と小さく謝る。
言い訳は何もなかった。
少しの沈黙が落ちると、ハリーはユリにもう言うことがないと察したのか、詰めていた息を吐いた。
ユリにはそれがため息に聞こえて、ビク、と肩を揺らす。
その大きな瞳には涙がたまっていた。
けれど、私が泣くのは違う、とユリはそう思っているから、顔に力を入れて必死に耐えた。
「ユリ」
やっと、ハリーが口を開いた。
ユリの名を呼んだ。
「僕……僕、怒ってないよ。ユリの家族のこと、忘れてただけなんだ」
言っている意味が分からなくて、ユリは顔を上げた。
ハリーは何とも言えない顔をして、目尻に涙を光らせている。
「僕、君が僕と同じようにできるって……魔法省に反発できるって、勝手に思い込んでた。たしかに、さっきまで少し怒ってたけど、それは僕のせいだ」
ごめん、とハリーは言った。
彼は、ユリの思っていたよりずっと大人で、優しかった。
ユリがそうであるように、ハリーも友だち思いで、ちゃんと話せばわかってくれる。
昨日視線が逸れた瞬間に関係が終わると考えるのは、お互いに早計だったのだ。
「ユリ、変な顔になってる」
「待っで、ぜッだイ泣がないがら……」
ユリの奮闘に、ハリーがやっと笑顔を見せた。
彼女は結局泣かずにコンパートメントに戻ったが、一時間後に見に来たハーマイオニーが、二人が仲良く蛙チョコのカード交換をしているのを見て泣き出したので、それでついに泣いてしまった。
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作者名：にはろ | 作成日時：2023年2月18日 22時
