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「私、魔法省には噛みつけないんだ。じいちゃんが殺されちゃうから」
「……イギリス魔法省の刑罰に死刑は無いわ」
ううん、と首を横に振る。
「じいちゃんは今、オーストリアにいるけど、籍はどこの国にもないの。国際魔法使い連盟ってとこが管理してるから。でも、イギリスの魔法省がその気になればどうとでもできちゃうんだ」
「……ダンブルドアがイギリス人だから？」
今度は縦に頷いた。
「日本の魔法省は、まだ死刑をやってる。他にもいくつか、死刑をやってる国はある。……ファッジが教えてくれた」
ユリは手のひらを後頭部において、誤魔化すように照れるしぐさをしながら、言葉を探した。
「だから……その。なんて言うかな……」
しかしやがてそんな仕草も元気がなくなって。
力なく手を膝に置き、俯いて、弱々しい声で結局こう言うだけだった。
「……ごめんね」
ぽろ、と。
雫がユリの手の甲に落ちた。
ハーマイオニーは耐えられなくなって、ユリをがばっと抱きしめた。
「いいの。いいのよユリ……！」
そうして一緒にひとしきり泣くと、やっとユリと視線を合わせて言う。
「言ってくれてありがとう、ユリ」
ユリはにへらと笑った。
まだ、ハリーとロンとは話せてないけど。
ハーマイオニーがいてくれたらきっと大丈夫だ。
「いまね、出発前のパーティーをしてるの。みんな下にいるわ」
「行ってもいいの？」
「当たり前じゃない。あんなバカげた記事、本気で信じてる人なんていないわよ。……シリウスは、少し怒ってたけどね」
その言葉に、ユリは少しきゅっと唇を結んだけれど、下の階に降りることにした。
地下は話し声で満ちていたが、ハーマイオニーが入っていくと、少し静まった。
「で？グレンジャー、客人は」
ムーディーの声だ。
その一言で、扉の陰に隠れていたユリは光の中に出た。
少し視線が彷徨って、ホワイトブルーが明るいグリーンを捉える。
しん、と沈黙が落ちて、その一瞬あと、ハリーは目を逸らした。
ユリはビク、と肩を揺らす。
拒絶された。
当たり前だ。
話せばわかると思っていたけど、無理、かも。
俯いたユリに、ハーマイオニーが逆に明るい声を出す。
「ユリ、見て。私とロンが監督生になったの。そのパーティーでもあるのよ」
その声を皮切りに、また話し声が満ち始めた。
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作者名：にはろ | 作成日時：2023年2月18日 22時
