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ユリはもう固まってしまって、その様子を凝視する。
それを見咎めて、スネイプが不機嫌そうに言った。
「力を抜け」
とても無理な相談だったが、ユリは努力して脱力した。
痛くは無かった。
むしろいつもずっと嫌な痛みがしていたのに、今はもう痛まない。
塗り終わってもスネイプはユリの手をじっと見つめて、やがて口を開いた。
「力が入らなくなるときが？」
「えっと……さっきがはじめてです」
それを聞いてスネイプはもう一つ瓶を取り、それをまたユリの手の甲に垂らした。
「次の補習とやらはいつだ」
「わかりません。今日このあと防衛術があるから、そこで言われるかも」
「では今週いっぱいスネイプ教授の罰則があるからできないと伝えろ」
「えっ？」
ユリは顔を上げた。
スネイプはいまだに顔をしかめたままで、杖を振って包帯をユリの手に巻いていく。
「それは魔法でやるんだ……」と少し残念に思いながら、ユリは口を開いた。
「あの……」
「二週間は安静。休暇は帰れ」
言いながら、使った薬瓶をユリにずい、と差し出す。
「毎晩塗れ。三日もすれば傷は消える。こちらはまた力が抜けたらそのときに使え」
ありえない好待遇に、ユリは唖然としてそれらを受け取った。
スネイプは気にせずユリを置いて研究室に引っ込んでしまう。
ユリが我に返ったのは、それから一分ほど経ってからだった。
「あっ……ありがとう、ございます！」
研究室に向かって叫んだが、当然返事はない。
ユリはいそいそとカバンに瓶をしまい、急いで昼食へ向かった。
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作者名：にはろ | 作成日時：2023年2月18日 22時
