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「ミスター・ポッター、続けなさい」
そして、彼女は古い指輪がたくさん嵌まった手でユリの書いたレポートを取り上げた。
「本はあまり使わなかったようね」
「グリンデルバルドに関する本は大体読んだことがあります」
「そう。結構」
アンブリッジがそう言うと、ハリーはまた羽ペンから手をはなしたが、それをアンブリッジが見咎める。
「ミス・グリンデルバルドの課題はまだ終わっていませんよ」
「え」
ユリは思わず声を漏らした。
ハリーのために、最速でレポートを仕上げたはずだった。
なにか、不備があっただろうか。
困惑するユリに、アンブリッジが真っ新な羊皮紙と、ユリがたった今書き上げたレポートを並べて差し出す。
アンブリッジはニタリ笑いのまま小首を傾げ、言った。
「複写をしなさい。この羊皮紙も五十センチです。今夜は、そうね、表と裏、二回でいいでしょう」
「今夜？」
ユリはまた声をあげた。
今夜と言ったか、この人は。
まるで次回があるような言い様ではないか。
「何か？ミス・グリンデルバルド」
「あの……この補習、は、今回だけではないんでしょうか？」
「遅れは一夜だけでは取り戻せませんわ」
隣でハリーが息を呑んだのがわかった。
ユリは当然、反論できるわけもなく、俯いて、「はい、アンブリッジ先生」と小さく言った。
複写は、ハリーと同じ羽ペンで書かされた。
ハリーとちがって、ユリはずっと違う文字をランダムに刻みつけていたから、終わるころには手の甲全体が真っ赤に腫れていた。
二人は解放されると、一言も言わずにその部屋を出る。
学校はがらんとしていた。
二人はゆっくり廊下を歩き、角を曲がり、絶対アンブリッジの耳には届かないと思ったとき、同時に口を開いた。
「ユリ」
「ハリー……あ」
ユリが譲った。
「ユリ、君のはマクゴナガル先生に言うべきだ。これじゃあ罰則だよ」
ハリーの言うことはもっともだったけれど、ユリは緩慢に首を横に振った。
自分が我慢して済むなら、抵抗するのが今は無駄なことに思えた。
今度はユリの番だった。
「ハリー、お腹空かない？しもべ妖精に、サンドイッチを頼んでおいたんだ」
「いいね。でも、ハーマイオニーには内緒だ」
「そうだね」
ユリは苦笑した。
ハーマイオニーはこのところ、屋敷しもべ妖精を解放しようという運動に夢中だった。
二人はお互いに小さく笑って、寮への残りの道を駆けた。
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作者名：にはろ | 作成日時：2023年2月18日 22時
