ページ ページ17
.
五時五分前、ユリはなんとか軽食を胃に詰め込んで、ハーマイオニーから杖を受け取り、四階のアンブリッジの部屋にハリーと出かけた。
ハリーがドアをノックすると、甘ったるい声がした。
「お入りなさいな」
ユリは、ロックハートとルーピンのときのこの部屋を知っていたが、その二人よりもよっぽど……鮮やかな、部屋だと思った。
ハリーに言わせれば、相当な悪趣味である。
二人はそのまま立ちすくんだ。
するとまたアンブリッジの声がした。
「こんばんは、ミスター・ポッター。ミス・グリンデルバルド」
「こんばんは、アンブリッジ先生」
二人は授業のときに散々仕込まれた返事を、そろって返した。
「さあ、お座んなさい」
アンブリッジはレースの掛かった小さなテーブルが二つ並んでいるのを指差した。
ニタリ笑いで見つめられながら、ユリはハリーをちら、と見て、椅子に腰かけテーブルの上に借りてきた本を置く。
アンブリッジがそれを覗き込んだが、ユリはすまして子猫の絵が描いてある飾り皿のコレクションをじっと見ていた。
この本は全部魔法省の人間が関わっているから、ケチをつけられることはないはずだ。
「よろしい。では、朝しらせたとおりにレポートを書きなさい。羊皮紙五十センチです」
アンブリッジはユリにそう言いおいて、あとはハリーにかかりっきりになった。
「書いてちょうだいね。『僕は嘘をついてはいけない』って」
「何回ですか？」
「ああ、そうね。では、ミス・グリンデルバルドの課題が終わるまでにしましょうか」
ユリは、羽ペンにインクをつけながらそれを聞いて、とっとと終わらせなければいけない、と悟った。
さらに、隣でハリーの呻き声が聞こえた時、ユリはそちらを向いて、あっと息を呑んだ。
〈僕は嘘をついてはいけない〉
右手の甲にそう、文字が現れていた。
ユリはすぐにその原因が分かった。
アンブリッジがハリーに渡した羽ペンに、魔法がかかっているに違いない。
ユリはますます焦って、「ゲラート・グリンデルバルドの罪とそれに対する初見」というテーマを羊皮紙の一番上に、「魔法薬学」のレポートよりよほど大きな文字で記した。
「終わりました、先生」
一時間半後、ユリがそう言うのと同時に、ハリーが丸めていた背を伸ばして右手を振った。
しかし、アンブリッジがピシャリと言う。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 819人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：にはろ | 作成日時：2023年2月18日 22時
