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次の日。
ユリは最後の「薬草学」の授業が終わった途端に教室を飛び出し、図書館へ向かった。
朝ふくろうに運ばれてきた手紙に課題の内容が書いてあって、「任意の参考文献三冊」をアンブリッジの部屋へ持参しなければいけないのだ。
五時に始まるそれの前に夕食も食べておきたいので、ユリは急いで本を漁る。
幸い、その「課題」については、この学校でユリが最も詳しいのではないかという分野だったので、本の目星はついていた。
あとは、それがどこにあるのか探すだけだ。
ユリはローブをまさぐって、杖が無いことに気づいた。
ああ、そうだ。
「薬草学」の最後にハーマイオニーにいったん預けて、それきりだ。
慌てて出てきたので、忘れていた。
なので、高いところにある本を取るには脚立を引っぱってくるか、司書のマダム・ピンスに頼むしかないのだが。
ユリはあたりを見渡して、脚立が無いことを確認し、上の、ギリギリ自分でも取れるか取れないかくらいの位置にある本を見て、踵を目一杯上げて手を伸ばした。
指先が背表紙の一番下を擦るが、それだけだ。
肩を落として、仕方なく脚立を取りに踵を返そうとしたとき、影が落ちた。
「これ？」
爽やかな声が降ってきてユリが見上げると、セドリック・ディゴリーもユリを見下ろしていた。
ユリはパチパチ、と何度か速く瞬きをした後、にこりと笑って「うん。それ」と言った。
「ありがとう、セドリック」
セドリックが本を余裕そうに取るのを眺めていると、彼はユリが求めていた本の題名を見て、微かに眉を顰めた。
「『黒い魔法使いの誕生』？ユリ、これ……」
「防衛術の課題で必要なの」
「君にやらせるようなものじゃない」
「ううん。これ、私専用の補習課題」
ユリは少し笑いながらそう言ってのけた。
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作者名：にはろ | 作成日時：2023年2月18日 22時
