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鹿島だち直ぐ、呆気なく目的は見つかった。
「ア居た」
「む、ええっと……オヤジーッ」
「ブッ」
オヤジと呼んだのは朔久で、噴き出したのはAである。
無惨は最初呼ばれたのが自分であると知らず声の出所に鋭い瞳を向けて、子女二人を発見した。
そして、自分がオヤジなどと呼ばれたことに気が付き、顳顬に青筋を立てる。
まったく、気分の昇降の激しいジジイであった。
さっきまで上機嫌だったのに。
双子の方も流石にマズイと思ったか、しまった、とトットコ逃げ出す。
無惨は今度は追いかけた。
「なんアレ。さっきまで怒ってなかったじゃん」
「今話しかけんな」
「ごめん」
朔久は本気で逃げた。
本気と書いて臨死と読む。
中途刺青の鬼とぶつかりそうになるなどした。
上弦の参・猗窩座は不審者に声を荒げかけ、その後ろに文字通り鬼の形相をした無惨を見つけて慌てて引っ込む。
何があったか知らんが巻き込まれるのはゴメンである。
「すんません!」
「誰?!知り合い?」
「黙れ」
「はい……」
己が裸であることも忘れ双子は無惨から逃げ回った。
大したものだ。
騒ぎを聞きつけ、無限城駐在の鬼達がなにやなにやと集まってくる。
無惨がここまで駆け回り暴れ回るのはウン百年で初めてのことである。
鬼共は流れ弾を食らわぬよう、そっと其方を覗いていた。
双子はこれ幸いとそこらへんにいた鬼から着物を剥ぎ取り、雑に着た。
「俺の帯!」
「任せろ」
その間にも無惨は迫る。
「誰が歳の逸った爺だと」
「そんなこと言ってないよ親父」
「しつっけーんだよクソジジイ!!」
「今言った!!!」
結局その日も逃げ切った。
明日にはきっと無惨もケロッとしているだろうし、双子は一応交代で起きていたが、途中から面倒くさいし眠いしで、Aが朔久を起こさぬまま二人で腹出して寝ていた。
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作者名:にはろ | 作成日時:2021年5月24日 16時