7 ページ7
.
「アハアハアハアハアハ」
「ははははッ、ゲ、ゲホっホッ、ケッ、ハハハ」
暫く浸かって伸びをし、朔久が城の何処かにいる無惨にも聞こえそうな大声で叫んだ。
「メシ探し行くかーっ」
彼がバッチャン!と水飛沫を上げながら腕を下ろしたのでAは拳を朔久にぶつけた。
朔久はチンピラみてえな声をあげて妹に対抗する。
狭い鉄砲風呂の中で双子の兄妹は取っ組み合いの喧嘩になり、勿論Aが勝てるはずもなく、「ギャッ」と間抜けに床に転がった。
強めに打った腰を押さえながらAが立ち上ががったとき、突然ガラガラガラと戸が開いた。
朔久は追い討ちをかけようと風呂から身を乗り出し、Aは婆ァみたいな格好のまま固まった。
向こうさんもまさか他人(鬼)がいるとは思わなかったのだろう、目を見開いている。
この城で遭遇する時点でまず鬼である。
さらに多分風呂を使えるのは上流階級の、つまりは強い鬼だのでは。
そこまで思考が行った兄は妹の二ノ腕を鷲掴み、木壁を突き破って逃亡した。
服そっちのけで飛び出したので二人ともスッポンポンである。
結論から言うと、朔久の判断は正しかった。
入ってきたのは上弦の肆・童磨であった。
たまの息抜きに酒風呂にでも入ろうかと、昨日のうちに滅多に使われない風呂場を自分でせっせと洗い(偉い)、そして一番風呂を奪われたのである。
普通にかわいそう。
ゴリゴリの近接系である朔久はこのかわいそうな鬼と相性が悪いので、兎にも角にもギリギリセーフだった。
で、その大貢献の朔久は、命を救ってやった妹にこれ以上ないほど責められていた。
「服は?」
「……置いてきた」
「十五の女を裸で外に連れ出すかね?普通」
「ウン……」
朔久だってフル…ンで走るのは嫌だったので、小さくスマン、と謝った。
.
67人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:にはろ | 作成日時:2021年5月24日 16時