5:本能に従うべし ページ5
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暫く無惨は血眼で双子、特にAの方を探し回ったが、マァとにかく餓鬼共、隠れるのも逃げるのも上手い。
何故かといえば、山小屋暮らしのときによく山賊がやってきて、それを子供の頃から隠れて逃げて、やり過ごしていたからだ。
そして、ちゃんと準備をして日暮れを待ち、ボコボコにしに行った。
どっちが山賊かあまりわからないような有様だった。
三日四日もすれば無惨も飽きたんだか諦めたんだか、四六時中探し回るのをやめた。
それにしても、双子は何故かとにかくよく城の中を走り回った。
無惨に追われているわけでも、目的があるわけでもないのに、この元気っ子どもは障子を突き破り机をひっくり返し柱を折って、駆け回るのである。
そして、無駄に無惨と遭遇した。
珍しくも無惨がびっくりしている隙に勝手に逃げるので特に問題はない。
子育て初心者にはどうしようもなく手に負えないヤンチャなクソガキであった。
無限城は破壊されたものが勝手に直るわけではないので、そこら中にヤツらの痕跡がある。
それを視界に入れる度、無惨は舌打ちをしたり二百年ぶりのため息を漏らしたりするのだった。
そして、双子が無限城に拐かされて七日が経った。
二人は、無惨に見つかりはするもののどうにもうまく逃げおおせていた。
そうして七日もの間逃げ見つかっては逃げを繰り返していたが、何の前触れもなく二人は無惨の前に現れた。
血鬼術でも何でもない。
二人の意思である。
これには無惨も鋭い目を見開いた。
ついにヤケを起こしたか、それとも自分を殺しに来たか。
いずれにせよ殺す未来は決まっているのだが、と思う。
この時、千年生きてなお子育て初心者の無惨にはわからなかった。
子は、父の予想の遥か上を行くものである。
特に鼻垂れのクソガキと、思春期の時期は。
「風呂入りたいんだけど」
「腹減った」
頭のおかしい鬼のハーフは、同時にそれらを言い放ったのであった。
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作者名:にはろ | 作成日時:2021年5月24日 16時