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Aは具材を鉄板の上に流し、手際よくヘラをさばく。
そうして謎の輪を作り……無惨に器を渡した。
わけのわからない無惨は器の中の液体を揺らす。
Aが輪と器を交互に指さすので、意味を察して、器をひっくり返した。
「うわへったくそだな」
当然、土手からは汁が溢れ出す。
Aは慌ててヘラでそれを抑え込んだ。
「土手があったら溢れないように入れるじゃん？普通」
「どうでもいい。どうせ食うのだろうが」
「これだから平安貴族は」
いや、平安貴族はむしろ綺麗に食べようとするのか？
まあ、どうでもいいや。
ある程度煮立って、Aがヘラを差し込む。
そして、ぱく、と口に含み、無惨を見上げて笑った。
「食べなよ。おいしいよ」
無惨は手渡されたヘラともんじゃとを見比べ、Aのしたようにもんじゃを口へ持っていく。
鬼の王ともんじゃ。
配下が見たら卒倒ものである。
親子は、食べながら語らった。
「やっぱ浅草治安悪いよね。酔っ払いに絡まれてぶん殴ろうかと思ったけどやめといた」
「……」
「三人組のさあ、でっかい坊主とちっちゃいのと、毳い女」
「それなら、私が殺したな」
「三人とも？」
「うん」
「すぐ人殺すじゃん」
やだねー、と、しかし笑いながらAは言う。
彼女もそこそこ異常である。
無惨は小さい口でゆっくりともんじゃを咀嚼していた。
「おいし？」
「……いや。味はよくわからんが」
そう言って、再びヘラを伸ばす。
「悪くはない」
「おいしいって言え！」
Aは笑って、無惨の帽子を取った。
取って、自分の頭に被せる。
無惨は娘の突然の奇行にちろ、とその紅い瞳を動かした。
「似合う？」
「まったく」
「似合うって言え！」
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作者名：にはろ | 作成日時：2021年5月24日 16時
