親子喧嘩【鬼舞辻無惨】 (ページ33)

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「親父は、何だったの。どうやって生きてきたの」

そんなことを急に聞いてみた。

無惨は驚くでもなく、Aを見るでもなく。

ただ、酒を揺らして月を見上げ、徐に口を開く。

「……覚えていないな」

なにも。と呟いた。

Aは納得のいかぬような、不安げな目で無惨を見上げる。

父親の弱い姿は娘にとっちゃ泣きたくなるほど悲しくなるものである。

つい、ぽろぽろと口から言葉が転びでた。

「親父。本当に困ったら、私のこと殺して喰っていいからね」

「は？」

唐突に何を言い出すのだこの子供は。

無惨は不審げにAを見やる。

どちらかと言えば父親に似た顔で彼女はいつも笑う。

「もう百年生きたよ。もうすぐ二百年。楽しかった。楽しいなあ。でも、もういいよ」

それには何も答えず、風呂を出る。

にこにこいつもと変わらぬ笑顔で声でああ言った小娘に、無惨はどうしようもない気持ちになって、ひさしぶりに自分で狩に行った。

でも、Aとそう変わらぬ見た目の齢の娘が怯えるのを見て、またなんとも言い難い気持ちになって、やめた。

頭の中でいつまでも声が反響して、どうしようもない。

「私に生をくれて、ありがとう」

ありがとうなんて、初めて言われた。

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