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「親父!俺ら熊狩って来たいんだけど!」

「は?」


それは、唐突であった。

無惨の自室にドカンと押し入り、そう言ったのは朔久である。


珍しくげんなりしたAが後ろについていた。


「いや止めたんだけどさあ。どーうしても熊鍋食いたいってさあ……」


呆れたように指さしながらAが言う。


何故急に、何故今、という問いに答えることはできなかった。

それは何故なら、朔久が今食べたいと思ったからに過ぎないからである。


バカなんだろうか。

きっとそうである。

今コイツは己と妹が囚われの身である自覚がないのだろうな。


当然、答えは否である。


「貴様の腕切り落として食えば良かろ」

「は?それ熊鍋じゃねえし。バカなのか?」


バカはお前だ。

無惨は額に青筋を立てた。

それでも殺しに出ないのは、無自覚に父親として怒っているからであった。


「貴様らを外に出すわけがなかろうが。身の程を知れ」

「それは親としてどうなのか?可愛い子には旅をさせろよ」

「可愛い子?そんなものは見当たらん。出ていけ」

「お前友達いないだろ!そんなんだから子どもが反抗期になるんだぞ」


珍しくAが諫めるにもかかわらず、朔久が退く気配はない。


「じゃあこうすれば?親父も来いよ」

「行かん」

「楽しいよ熊狩り」

「行かん。消え失せろ」


そうは言われても、こちとら数十年外に出ていない。

いつも無限城を走り回り破壊しているのは、鬱憤がたまっていることも要因の一つである。


それからも、朔久は懲りずに無惨に頼みに来た。


毎日、毎日。


機嫌が悪い日などは何度もあって、その時は殺されかけたが本当に懲りない野郎だった。





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作者名:にはろ | 作成日時:2021年5月24日 16時

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