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「目立つなっつったろうがッ」
「でも人死にそうになってたよ」
「そうさな。それでアイツも目出たく鬼になったってわけだ」
「……ゴメンナサイ」
朔久は無言でAの髪をかき回した。
妹の心の優しいのを知っていた。
だから強くは叱れないのである。
さて、逃げたところで宿をどうするかである。
これだけ家があれば、廃屋の一つや二つありそうなものだが……。
「宿をお探しかな？」
「アッ？！」
声がして勢いよく振り返る。
さあ、と風が吹き、視界に入り込んだ金の髪を揺らした。
「エ誰」
「……知らん」
いつの間に青年が立っていた。
双子は警戒しジリ、と後ろへ下がる。
それに金髪の青年はニコニコ笑いながら近づいていく。
ところで、このひとらが今いるのは高い屋根の上である。
なので普通に考えて人間が来られる訳もないのだが。
朔久がすん、と鼻を鳴らして、言った。
「お前……人じゃない？」
言われた青年はさらにニッコリ笑って、朔久の言葉には答えずに双子へ近づいてくる。
そして双子…Aの足元に跪いた。
「君、さっきは助けていただいた。どうもありがとう」
Aの左手を取り、口づける。
唇が触れた瞬間、朔久がAの肩を引き避難させた。
Aは驚いて固まっている。
感謝されることをした覚えはないし…。
「あ。もしかしてさっきの？毒の」
「ああ！覚えていてくれて嬉しいよ」
「は？」
「回復早くね？」と朔久。
さらに青年が放った言葉に、双子は再び驚くことになった。
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作者名：にはろ | 作成日時：2021年5月24日 16時
