検索窓
今日:17 hit、昨日:35 hit、合計:28,321 hit

16 ページ16

.

大妖怪・九尾に連れられ着いたのは、下野国の辺りのおいなりさまだった。

小綺麗にされた石の参道を歩く。


「うわ」


Aが声を上げた。


狛狐がこちらをじろ、と見たように感じた。

というか実際そうであった。


「あら。びっくりしたかな」

「や。だいじょぶです。これも妖怪ですか?」

「少し違う。石に魂を入れる術があるんだよ」


へえ、と今度は感心の声が漏れた。


本殿らしき立派な建物に辿り着く。

九尾が近づくと固く閉じられていた扉が勝手に開いて、彼を中へと通した。


一方の双子は立ち尽くしていた。

昔山にあった神社で遊んでいたときに、本殿に入ったのが母ちゃんにバレて死ぬほど怒られたからである。

夕飯を嫌いなごぼうばかりにされたのを覚えていた。


双子が顎にしわを寄せて動かないのを見て、九尾は軽く笑って言ってやった。



「私の神社だ。おあがんなさい」



それで二人はやっと下駄を揃えて本殿に入ったのだった。

質素な小部屋に通され、用意されるまま座布団の上に正座すると、「今茶を用意させるところだから」と向かいに九尾が胡座をかいた。


「さて、改めて。私は白面金毛九尾。玉藻前は知っているかい」

「『御伽草子』の?殺生石のやつですか」

「そうさね。でも石の話はでたらめだ。天竺の華陽夫人の話もね。まったく、人間はお話を作りすぎて困る」


玉藻前の話は本当なんだな。

思いつつ朔久はAの方も指差しながら。



「朔久と申しますものです。此れは小妹のA。こな度は鬼舞辻無惨の勝手により……」

「良い、良い。堅ッ苦しいのは好きじゃあない。楽にしなさい」


それでにこりと笑うのだから、双子はほっとしてわずかに緊張を解いた。

そして九尾は小僧に妖の宴について説明してやる。


「酒呑殿は別格。私は父から四百年程前にこの二座を継いだ。で、君らの父君だけど、彼は三座。こないだ……二百年くらい前?まで別の奴だったけど、彼が獲っちゃったんだよね。ほら、おになんていっぱいいるからさ。一応酒呑殿も鬼の一人だしね」


以下略。


兎に角妖は人間の数ほど居るので、説明が大変である。


がしかし、無惨が九尾に愚息らを託したのはそのためではない。



「君たちが学ぶのは外つ国の言葉だ。ひと月で叩き込む。悪いけれど、そう頼まれたのでね」








彼の父は己の役である筈の"獨逸吸血鬼との交渉"を丸投げするつもりなのである。





.

17→←15



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (40 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
67人がお気に入り
設定タグ:鬼滅の刃 , 鬼舞辻無惨
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:にはろ | 作成日時:2021年5月24日 16時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。