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知らせを受けた無残は小屋に入るなり無造作に赤子を掴み上げて、お多喜に陽の光に当たらせた。

あとから生まれた妹の方だった。


赤子が灰になることはなく、無惨はそれに満足し、兄の方は確かめもせずに夜を待って出て行った。


お多喜には、赤子の面倒を見るように言い残した。

十五年後に見に来る、と。

自分が赤子を殺さないためである。


お多喜が無惨を恨まないはずが無かった。


実際、今まで無惨への恨みを赤子に向けた母親はいた。

鬼である赤子は少し痛めつけられたくらいでは死なないが、所詮赤子、そして人間の血も混ざっているためにあまりに苛烈な暴力によって死んでしまったことがあった。

勿論、その母親は無惨に殺された。


しかし、お多喜は賢かった。

まず、兄を朔久、妹をAと名付け、育てた。


鬼が人間を喰らうことは知っていたが、流石に殺人は犯せない。

代わりに、兄妹が腹を空かせないよう罠をはって捕まえた猿や鹿の肉を与えた。


そうするうちに、Aの方が人間に近い食事もとれることに気づいた。

朔久は頑なに肉だが、Aは山菜や茸も食べる。

それからは大分炊事が楽になった。


四歳になった頃から本格的に勉学を教えた。


二人は鬼であるが今のところ人間と同じ速さで成長していた。


お多喜は比較的裕福な商家の娘で、読み書き算額古典ができたので、子どもたちに指南した。

二人とも覚えが速い。

どちらの血を継いだのかは、わからない。


八歳になると、お多喜は少し早いかと思いながらも父親のことを打ち明けた。

二人はぽかんとしていたが、日が経つにつれその意味を理解していったようだった。

自分達がどこかお多喜と違う理由。

朔久は、そういえば陽の光を拒絶していた。

Aは外に出て山菜を摘んだり、木に登ったりするのに、朔久は絶対に日のあるうちに外に出なかった。


あの時に無惨に選ばれなくて正解だったかもしれない。





歪な三人は、小さな山小屋で微妙な距離を取りながら暮らしていた。





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3→←1:序



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作者名:にはろ | 作成日時:2021年5月24日 16時

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