及川妹、リベロになる。 (ページ36)

今日:5 hit、昨日:29 hit、合計:303,914 hit

敗北。ページ36

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笛の音がなって、ぞろぞろと整列する。

あれ、向こうと照明違う？ってくらいコートの明るさが違って、毎回のことながら戸惑った。

セットカウント1-2。

こちらは一年の実力が飛びぬけてたけど、向こうはチーム全体の、特に三年生に年季の入った強さがあって、ラリーが続いた。

そしたら途中で花那の脚が攣って、まさかのブロックの要が一時退場っていう。

その隙に一気に最終セット二十点台まで持ってかれて、粘ったけど負けた。

「ありがとうございました！」

西谷と視線だけ交わして退場する。

一年は誰も涙は出てなくて、ただ先輩を見つめた。

サーブで狙われてしまった先輩が謝っていて、少し気持ちがわかる。

バレーは繋がってるって、頭ではわかっているけれど。

私は今、レシーブが他より少しできるくらい。

でも、それではダメだった。

安心して背中を任せてもらえるくらいにならなければ、リベロでいる意味はない。
それこそ、スパイカーだっていいわけだ。

「どう？男子」

「勝ったって」

「ふーん」

ちひろは変わらない。

帆夏と花那は先輩と抱き合っていた。

この試合で三年生四人が引退する。

試合するのにギリギリの人数になる。

だから、ちゃんとした指導者と、環境を。

頭は既に先に向いていて、先輩に頭を下げた。

「ありがとうございました！」

後ろを向いている時間はない。

もっとうまくなって、試合で勝ちたいから。