及川妹、リベロになる。 (ページ11)

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天才と話す。ページ11

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連れてこられたのは自販機のある体育館裏。
体育館裏で起こる事なんて告白か虐めと決まっているが、今回は例外のようだ。

「セッターやめたってどういうことだ」

日向翔陽、花那の言っていた一組の男バレ部員から聞いたらしい。
大方、花那が女バレの事を話したのだろう。

「いや、ちょっとリベロやってみようかなって」

嘘はついていない。

でも、影山は知っているから。

「……おいまさか、引きずってんじゃねえだろうな」

「引きずっては、無いよ」

引きずってはない。
それは確信できる、なぜなら。

「気持ちに整理がついただけ」

「……そうかよ」

最低限のデリカシーは持ち合わせているらしく、それ以上は何も聞いてこない。
まあ聞かれても別に私は構わないけれど。

踵を返した影山を追いかける。

「体育館出禁になったってマジ？」

「……ああ」

うわ、イライラしてる。

「初日から喧嘩って、そんな気に食わない奴いたの？」

「弱くてヘタクソなくせに態度と声だけデカいクソ腹立つ奴」

「……大変そうだね」

いつも一言多くて別の一言が足りない影山の言葉で日向翔陽の第一印象を決定するようなことはしないが、まあどちらも被害者で加害者な気はする。

「……あ」

「え、なに」

急に立ち止まり声を上げた影山。
こちらに顔を向け、言う。

「古文、全部忘れた」

「……今日初日ですケド」

じっと見つめられて、溜息を吐く。

「……貸すよ」