Story In The Music 【短編集】

意気地 G6 ページ1

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「ん〜、美味し！」


服の端から伸びる部分の魅惑的なゾクゾクするような肌。

周りの視線、全てを集めるようなハッキリとした滑らかな身体のライン。

ぱっとした華やかな顔立ちで、パーツの一つひとつが目立つ。

それでもって、前書きされたような丁寧な選ばれた言葉遣い。


俗に言う、絶世の美女と呼ばれるほどの美人。





………それほどとはお世辞にも言えない、

そんな読売ジャイアンツの女トレーナー。


「Aさん、俺いつマッサージだっけ？」




ブルペンから戻ってきたのか汗を滲ませた智之が、サロンのテーブルで常備されたお菓子の小袋を次々と開けているAに向かい合って座る。



「ん？今からでもいいよ？」


「じゃあ、Aさんがおやつ食べたらね」


「智くんバカにしてるでしょ」


「いーえ？」


とぼけた顔を見せ、テーブルの上で肘を組み前のめりでお菓子を嗜むAを見つめる。するとちらり視線が俺を捉えたかと思うと、


「…なに、どうしたの？勇人？」


「…いーや？」


お菓子続けてください？
なんてわざとらしく交わし、顔を正面に戻しやたらとニヤニヤと笑みを浮かべる智之。



………ほんま、生意気野郎、。




「よし、お待たせ！行こうか！」



パンパンっと手を払い、お菓子の袋をゴミ箱に捨て、

ニコニコと智之の腕を引きサロンを出てゆくAを視界の隅で常に捉えている俺。


今だけじゃない、どんな時だって俺は無意識にもAを見てる。


いつだって会える。それなのに、行動すら何も起こせない俺の心は全くを持って満たされない。


理由なんか探したって野暮。



そもそも俺の好みのタイプなんて概念無視したようなタイプ。本来なら有り得なかっただろうに。


何故だ。


なぜだか俺は彼女に、


Aに、


触れたいと思ってしまう。



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