恋人はあなた。-４-

18 ページ18

会場から駅に向かって歩く間、互いに何も話さない。


…確実にいつもと違うビミョーな空気が流れてる。




もう、さっきのこともピアスのことも、今聞いちゃおうかな…

外の方が、人の目もあるし冷静に話せるかも。









｢みっくん｣


｢ん？｣


私の半歩前を歩く彼は、少し振り返って返事をした。



｢ちょっといい？聞きたいことがあるの｣


私は、並木道の脇に並んでいるベンチを指した。



｢…うん。…俺も聞きたいことあるし、話さなきゃいけないことある｣


｢なに？先に聞くよ｣


｢そ？…じゃー俺から話すわ｣



二人でベンチに座って、前を見ながらみっくんが話し始めた。







｢まずさ…今日、藤ヶ谷くん来てたの？｣


｢え？うん。職場の人と来てて途中で会ったの。みっくんと二階堂くんに挨拶したいって言ってたんだけど、予定あって先に帰っちゃった。どっかで見たの？｣


｢うん、まあ…｣


｢そうなんだ、よく分かったね｣


｢見たから…｣


｢え？｣


｢俺らが居ない間、一緒に行動してたんだろ？
二人で…手繋いでるとこ見たから｣









…あの時だ。







｢あれは、手繋いでたっていうか、ちょっと引っ張られて…｣


｢あのさぁ。藤ヶ谷くんってAのこと好きなんじゃないの？｣


｢何で？｣


｢何となくだよ。仲いいみたいだし、なんかそういう雰囲気に見えたから｣


｢まぁ同級生だし、仲はいいけど｣


｢ホントにそれだけ？｣


｢どういう意味？｣




そこまで疑われる筋合い無いんだけど。

さすがにムカついてきた。




｢私、疑われてるの？｣


｢俺だって疑いたくねぇし、Aのことは信じてるけど…
向こうはどう思ってるか分かんねーじゃん｣


｢疑われるようなことは何もしてないし、疑われるようなことは何も無い。
…"私には"ね｣




｢"私には"…？｣




みっくんが、伺うような表情で私を見た。







｢藤ヶ谷くんが私の手を引っ張ったのは、みっくんと吉川さんが一緒に居るとこを見たからだよ｣


｢え？吉川？｣


｢さっき…段ボール置き場みたいなトコで一緒に居たでしょ？
…その時、二人がキスしてるように見えたから｣


｢はぁ？キスなんてしてねぇし。見間違いだって。たぶん、目元のゴミ取ってくれた時にそう見えたんだろ｣


｢…藤ヶ谷くんもそう言ってた。きっと見間違いだって｣


｢そうだよ、するわけねーじゃん｣


｢私もいつもなら、そうだよねって言えてたと思う｣

19 北山side→←17 北山side

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す