ワケあり家政婦さん【アイナナ】 (ページ8)

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壮五のご乱心ページ8

「あんたが俺と仲良くなりたいっていうならまだ分かるけどさ、人が言うから仲良くしたいって……そんなの、別に嬉しくねえし」

「そんなつもりじゃ……」

環くんの言いたいことは、とても伝わった。先ほどの壮五くんの物言いだと少し暖かさのない距離の遠い言葉のように感じてしまう。

それでも、壮五くんの気持ちもわかる。七人でデビューすることができなくなってしまった今、みんなの命運を背負っているような思いなんじゃないかな。

はやくみんなでデビューするために環くんとのギクシャクした仲をどうにかしなくちゃって焦っちゃってるように感じる。

でも、私が口を挟んでいい問題なのだろうかと言葉を探していると、しゃがみこんでいた環くんが腰をあげて立ち上がった。

「そーちゃん、俺のこと嫌いじゃん」

「……それは君だろ。言動の端々から伝わってくるよ。ガミガミだと、つまらないだとか、悩みがなさそうだとか、立っているだけでいいとか」

そ、そんなこと言っちゃったんだ……。それはまずいよ環くんとあわあわしながらも見つめるが「そんな事言ったっけ？」とあっけらかんと言ってのけた。

……案外こういうのって当事者は覚えていないものなんだよね……悪気はないんだろうけれど。

「じゃあ謝るよ。許して。……許した？」

「た、環くん……！」

「……っあのね、」

「は？怒んの？仲良くすんじゃねーのか？」

「…………」

「黙んのかよ。うざってぇ」

「環くん！！」

いくら頭に血が上っているとはいえ、あまりにも壮五くんを煽るような環くんの口ぶりに我慢出来ず大声をあげてしまった。

「なんだよ！Aっちもそーちゃんの味方すんのかよ！」

「そうじゃないよ！でも、環くんの物言いはあまりにも乱暴すぎます！」

「だってそーちゃんが……っ」

「いいかい、環くん」

壮五くんが語気を強めて言う。

私と環くんは向き合っていた姿勢を同時に壮五くんへ向けた。なんだか、とてもおどろおどろしい雰囲気が……。

「僕は大人だから、君みたいな振る舞いはできないんだ」

「いい子ちゃんに見られたいだけだろ」

「もう、だからそういう言いかた……」

「じゃがいもを握って。ピーラーを構えて」

刃の鋭い包丁が、こちらに向けられる。それは太陽の光を反射して、より恐怖心を煽った。

自身に向いた刃物に環くんは私に抱きつく形で飛びつき、恐ろしさに震えながら壮五くんを見た。

そ、壮五くんのご乱心だ！！