ワケあり家政婦さん【アイナナ】 (ページ15)

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笑顔を届けたいページ15

「仕事だからって言ったらそれまでだけどよ……」と言葉を繋げる大和さん。

私が皆さんにつくす理由。そんなの考えるまでもなく、決まりきった理由だ。

「お仕事だからきっちり熟さなきゃいけない、という理由ももちろんあります。社長からお給料もいただいていますから。でも、それだけじゃないんです」

手に持っていた包丁を置いて、エプロンで手を拭いながら大和さんと正面から対面するように体の向きを代えた。真っ直ぐ、揺れる瞳を見つめるように。

「前に壮五くんが「みんなを家族みたいに思ってくれると嬉しい」って言ってくれたんです。……私、皆さんのこと、本当の家族の様に大切に思っているんです。ただの一家政婦がこんなこと思うのも烏滸がましい話とは思いますが……」

「……そんなことないさ」

優しくそう言ってくれる大和さんに感謝を告げて、言葉を繋げた。

「なにより、私は皆さんの笑顔が大好きです！楽しそうに踊って、歌っている姿はとても魅力的です。こんなにもIDOLiSH7の皆は素敵な人だっていうことを、もっと多くの人に知ってほしい。だから、皆さんが毎日元気に、笑顔で過ごせるように私も支えなくっちゃ！って気合が入るんです」

言い終わってから、自分が握りこぶしを握っていることに気付いた。いつのまにか熱弁していた事に凄く恥ずかしくなって、顔から湯気がでしまいそうなくらい熱くなった。

「す、すいません！こんな熱く語ってしまって……！」

「……いいや、お兄さんの心臓にぐっときた。ありがとうな、Aちゃん。俺たちをそこまで想ってくれて」

大和さんはどこか吹っ切れたように、柔らかく笑った。

＊

「そういや、大和さん。あの有名な監督のドラマ出演のオファー受けたんだって？」

「ああ、まあな」

「大和さんドラマの出演渋ってたよね？」

「どういう心境の変化？」

朝、朝食をとる皆さんを見つつカウンターキッチンで洗い物をしてたらそんな会話が聞こえてきた。
大和さんは演技の才能があると一織くんが前に話していたし、きっと素敵な作品になるだろう。だけどなんでドラマ出演は嫌なんだろう？

そんな疑問を持っていれば、カウンター越しに大和さんと視線が交わった。

「俺たちの笑顔を、大勢の人に届けたくなったのさ」

ぱちりとウインクを飛ばされ、私は昨夜の出来事を思い出し、顔がまた熱くなる。

「すげーいいこと言ってるけど……おっさん、キャラ変したのか？」