couple box (ページ9)

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強く手を握りすぎたのかも知れない。

ヤスがむくりと起きた。

俺はとっさに手を離した。

「あれ？俺寝てしまってんな？ごめんごめん」

「ん、だいじょうぶやで。水もらうか？」

「んー、じゃ、ちょっと飲んどこうかな」

なんとなく、沈黙が流れる。
いや、俺が勝手に気まずいだけやねんけどな？

これから、彼と、どんな態度で接していけばよいのか迷っていたとき、
「なぁジョニー？聞いたんやけど、
この辺で昔好きだった子がおったってほんま？おれも知ってる子かなぁ？」

誰がそんなん話したんやろ。俺がこの話をしているのはジャッキーだけやから、まさか？
いや、彼は意味の無く人の話をするような人ではない。
だとしたら誰が...

いや、今はそんなことを考えている場合ではない。
目の前で投げかけられた質問に答えるべきだが...

ここで、実はきみだなんていえたら、どんなに楽だっただろうか。

もういっそ全て打ち明かして、子供のころの話だと、笑ってごまかしてしまおうか。

そう思ったけど、やっぱりできなくて、
だってあの子は俺の心のよりどころやから。
思い出の女の子が男やということがどんなにショックか分かるだろうか？

だから、おれは綺麗な思い出にふたをすることを決心した。

真実を明かす未来より、過去に縋ることを決めた。

「んー、どうやろ？確かにこの辺おったならヤスも会ったことあるかもなぁ...

まぁこの前たまたま再会して、こっぴどく振られてしまったんやけどな？」

「ジョニー？それってどういう...」

そう、俺は思い出の女の子に振られたんや。
俺が好きだった女の子はいまはもういない。
だからこう思い込むことで、自分の思い出を守ろうとした。

そしてヤスが何か言いかけたとき、それをさえぎるように声をかけられた。