couple box (ページ43)

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アーセナルside

待てって。
まだ、まだやろ。
俺は、間に合ったはずや。
お前がいなくなるのは、まだ先やろ？

なんで、なんでや？

なぜみんな、おれを、おいていく？

「…っ！アーセナル！」

「………ヤス？」

「よかったぁ…あ、今トッポ呼んでくるな！」

「いや、ええよ。今はヤス。お前が傍にいてくれれば、それでええ。」

「なぁ、アーセナル。それさ、俺を亮さんと重ねてるんやろ？」

「っ…なんでその名前」

「マックから聞いた。アーセナルは昔、亮さんっていう弟みたいな人がおったって。
けど、亮さんが地元のヤンキーに襲われて命を落とした…

アーセナル…俺は、安田やで、亮さんと、違うよ？」

「分かってる。そんなん、当たり前やろ」

「いや、アーセナルは分かってへん。
今ならわかんねん。アーセナルはいつも俺じゃなくて俺に重ねた亮さんを見てた。
俺は記憶が混乱してたから恋心と勘違いしたけど、アーセナルはそれが恋心じゃないって分かってたよね？」

「ちゃう…ちゃう！」

俺はヤスをベッドに押し倒す。
力では勝っているはずなのにヤスの目力に勝てる気がしない。

「なぁ、アーセナルにとって俺ってなに？友達？恋人？弟？違うやろ。アーセナルにとって俺は亮さんの代わりやったんやろ？」

「うっさい…だまれ！だまっっ！」

途中、言葉を遮るようにヤスが抱きついてきた。

「なぁ。アーセナル。俺は亮さんやない。
けどな、アーセナルが大事に思ってくれたおかげで、アーセナルが守ってくれたおかげで今、生きてるんやで？
だから、自分を責めないで？
これ以上、アーセナルが苦しむのは俺も亮さんも、見てるのは辛いよ…」

「お前に、亮のなにがわかんねん…」

「分かるよ。だって俺と亮さんが似てるって真っ先に思ったのは誰でもない、アーセナルやろ？
似てる者同士、分かることもあるんやで」

ヤスが頭を撫でてくれる。
…そっか、俺は今まで、無意識やけど、ヤスと亮を重ねてたんやな。
ヤスの手は小さいけど暖かい。
そーいえば亮の手は冷たかったなぁ。

「ヤス…俺は…いままで…」

「大丈夫やで？俺も楽しかったよ、恋人ごっこ。
アーセナルは優しいから、きっとホントに好きな人に出会えたらその人は幸せなんやろなぁ…」

「ヤス…っヤス…」

ヤスの肩を濡らしてしまったのは、俺達の最後の秘密や。