恋心 ページ37
ある日の午後。
仕事を午前中に片付けて、私はお母さんとお茶をしていた。
「そう、楽しめたなら良かったわ」
『ずっとチーノといて、気を遣うこともなかったからね。』
話題は数日前の舞踏会について。
舞踏会から帰ってきてからお母さんに会ったのは今日が初めてで、お土産もやっと今日渡すことができたのだ。
お母さんの体調は完璧、とまではいかないが良くなって、
付き添いを連れて城下に散歩へ行くほどには動けるようになり、
最近は、お母さんからいろいろ話をしてくれることも増えた。
『…あ、ねぇ、お母さん。』
「なぁに？」
『…あのさ、これからもずっとダンスの相手してほしい。って、どういう意味だと思う？』
私の問いに、お母さんは少し間をおいて答えた。
「…そのままの意味なんじゃない？」
『だよね、べつに深い意味なんて…』
「Aの傍にいたい。ってことでしょ？」
『はっ…？、』
「国を存続させるには、いつまでも独身ってわけにはいかないわ。
特に、国を支える幹部ともなれば、いつかは誰かと結婚するべきよ。
歴史上でも、結婚で国際的な絆を結ぶっていうような事柄はたくさんあったわけだし。
国の上層部にいる彼が、何の意味もなくそんなこと言うはずないと、私は思うわ。
それに、これはAが1番よくわかってたことなんじゃないの？」
お母さんはアイスティーを飲みながら、そう言った。
確かに、私は思った。
いくらチーノでも、自分の身分がどういうものかわかってるはず。
舞踏会の意味を知っていたんだから、なおさら。
そこから連想される理由はひとつ。
「で、どうするの？」
『え？』
「好きなんじゃないの。チーノさんのこと。」
『は、いや、何言って…』
「だってあなた、必ずと言っていいくらい、毎回私にチーノさんの話をしてくれるじゃない。」
たちまち顔に熱が集まるのを感じる。
『いや、でも、それはそんなんじゃないよ、ただチーノが何かと傍にいたから…』
そこまで言って実感してしまう。
チーノはずっと、私の傍にいてくれた。
いつも私にいろんな言葉をくれた。
最初はスパイであることをバラしたり、煩わしいこともあったけど、
チーノのおかげで私は今こうしてお母さんの傍にいられると言っても…過言ではないのかもしれない。
とにかく、私はチーノにたくさんの恩恵をもらっていたんだ、支えられていた。
…お母さんの部屋をあとにする時、
次は恋バナができるのを楽しみにしてるわ、なんて言ってお母さんは笑った。
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イデア(プロフ) - ひなさん» ひなさんコメントありがとうございます！そう言っていただけて凄く嬉しいです…！こちらこそご愛読ありがとうございます！！ (2021年7月13日 20時) (
レス) id: 8186d383a3 (このIDを非表示/違反報告)
ひな(プロフ) - は、初コメ失礼しますっ！いつも読ませて頂いております…！最近知ったばっかの新規でして…本当にいつも素敵な作品をありがとうございますっ…！ (2021年7月12日 1時) (レス) id: 2474e749f2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：イデア | 作成日時：2021年3月31日 20時
