また来年も*３* ページ18
「灯油ー？いないのー。」
「ん・・・何。」
「今日放送するって言ったでしょ。」
「ああ・・・あと少しだけ寝る。」
「ちょ、もう・・・。」
怒っていながら無理矢理起こさない。
コイツを想い続けて６年ほど経った。
向こうが此方の想いに全く気付いていないのは虚しいが。
「・・・ねー灯油。」
「ん・・・？」
「いつもの、いる？」
「いる。」
そう言ってアイツは鞄からいつものを取り出した。
「んじゃ今年は来年もよろしくってことで。」
「来年って年始まったばっかだろ・・・。」
「まあまあ気にしない気にしない。」
そんな軽く文句のようなことを言いながらも、しっかりいつものチョコを受け取っていた。
「・・・食べていい？」
「どうぞどうぞ。」
カリッと小さく音がした。
毎年、上手くなってるなと思う。
「去年より旨い。」
「まあ練習してるからね。」
好きなやついるんだったなってそう改めて実感した。
諦めなきゃなって思っても何もできていない。
「お前、好きなやつに渡さないのか？」
「・・・もう、渡したよ。」
なんでそんな悲しそうな顔するんだよ。
喜んでもらえたんじゃないのかよ。
俺なら、幸せにしてやれるのに。
そんなどこにでもある少女漫画の台詞のようなものが浮かんできた。
「灯油は、いないの？チョコ貰いたかった人。」
「なんで貰えないこと前提なんだよ。」
「ごめんごめん。で、いるの？いないの？」
「・・・いる。」
「そっか。」
本命を貰いたかったやつなら目の前にいるのに。
いるなんて言ってもどうせなんとも思わないんだろ。
でもそんなところも愛おしいと思えてしまう。
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