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歓楽街は、人で賑わい始めていた。
その人混みをかき分けて、小さな公園を抜けた所に行きつけのカラオケがある。
入店すると、外の喧騒とは程遠い気だるそうな店員から愛想なく302号室と告げられた。
部屋に入る直前、ドアを引きながら、くるっとAさんは振り返った。
「岸くんと2人きりでカラオケって、もしかして初めてじゃない？」
岸「あー、そうかもしんないすね」
「楽しみ〜」
この瞬間に『2人きり』を意識させるなんて、相当な小悪魔だ。
酔いも覚めるくらい、ガッチガチに緊張して部屋に入る。
Aさんが最初に歌う曲は『マツケンサンバ�供�
初めは俺も驚いた。
でも、流行にもその場の雰囲気にも、何にも縛られず真っ直ぐに歌うAさんに感動したのを覚えている。
宴会で披露した時に好評だったらしく、一曲目はずっとそれらしい。
飲酒後の独特なテンションで始まったカラオケは、その後も盛り上がる曲が数曲続いた。
「岸くんには特別に十八番を聞かせてあげよう」
岸「なんすか、マツケンサンバも十八番だと思いますけど」
「聞くが良い」
ピアノのイントロから始まるバラード。これまでとは違う曲調でドキッとする。
低音が続くメロディは、今の俺とAさんの関係を歌っているみたいだ。
聞き入ってる間にすぐ歌が終わり、何も言えずにいると、妙にしんみりした空気の中、Aさんは呟いた。
「岸くん、ラブソング歌ってよ」
岸「ラブソングすか」
「うん」
突然なリクエストの意図を探りながら、タブレットを操作する。
ラブソングと言えばの曲を入れる。
歌い始めると、左横に座るAさんがテンポに合わせて横に揺れ出す。
Aメロからサビにかけて盛り上がっていくのと反対に、横目で見たAさんはなぜか浮かない顔をしていた。
過去を思い出しているのか、ある一点を見つめていた。
そんなの今に忘れさせるから、だから俺の歌を聞いて欲しい。
いつも以上に気持ちを込めて歌った。
一番を歌い終えると、明らかにAさんのテンションが下がっていた。
これは何かしらの地雷を踏み抜いたのかもしれない。
と思った時、Aさんの頬がキラリと光った。その光の正体はよく見ると、涙だった。
どうしたんですか、とも声をかけづらく黙っていると、Aさんは声を上げて泣き始めた。
もしかしたら、前の恋を思って泣いているのだろうか。
そのことに気づいたら、余計何も言えなくなった。
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ぷぅ∞(プロフ) - sikiさん» コメントありがとうございます！そう言ってもらえて嬉しいです(,,> <,,) (2022年11月3日 23時) (
レス) id: 0b53292451 (このIDを非表示/違反報告)
siki(プロフ) - 好きです。（（真顔））好きです！！！！！！！ (2022年11月3日 8時) (レス) id: 3fe02dba58 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ぷぅ∞ | 作成日時：2021年5月5日 18時
