＞ ページ29
・
それでいて、顔だけは良い。反対に、良いのは顔と調子だけとも言える。
しかし、時にその調子の良さで私より良い成績を収めることもあるのだ。
現に、先月の営業所内での売上一位は永瀬だった。負けたことが悔しくて、発表された日はやけ酒をした。
だから仕事面では認めているし、頼りになることも分かっている。
それに、自分がこんなに永瀬をうざったく思っているのも、嫉妬のせいだということは薄々勘づいている。
「でも、やっぱりうざい」
思わず口から出てしまった。それくらいには永瀬が憎い、けど憎みきれない奴だ。
『廉さんのことですか？』
束の間の昼休みなのに、呟いた一言のせいでおしゃべり好きのピチピチ後輩に捕まった。この子には永瀬の愚痴を話したことがあるので、勝手に察しをつけられたようだ。
「まぁ」
『そんなに目の敵にするの分からないなー』
「分からなくていいのよ、これは」
『ふーん。廉さん目の保養になるし、仕事出来るし、良いじゃないですか』
「まぁ、顔は整ってるよね」
永瀬の無駄にかっこいい顔立ちを思い出しただけで、胸にムカムカとした感情が込み上げてくる。
ガツガツとご飯を食べる私とは逆に、サンドイッチを見つめ、思い詰めた表情のピチピチ後輩。
『私、廉さんにアピールしてるんですけど全然ダメなんですよ〜』
「え、そうなの」
その事実は初めて聞いたし、言われてからやっと、後輩がうちの部署に時々顔を出していた理由が分かった。
『ちょっと前からご飯誘ったり、お弁当作っていったりしてるんですけど、行かない要らないしか言われなくて。その点、Aさんは廉さんに好かれてますよね〜』
途中までへぇーと他人事だと思って聞いていたけど、最後の一言で急に私情になった。
「え、好かれてるの？」
『好かれてるというか、loveの意味の好きだと思いますよ？』
「え！」
いや、そんなまさか、ないよ、ないない。頭の中で否定語のオンパレードが繰り広げられた。
『鈍感なのか、天然なのか知らないですけど、しっかりしてください。振られた側としては、ライバルがこんなんとか納得いきませんから！』
ぼーっとした私にそう言った彼女は、椅子から勢いよく立ち上がり自分の部署へ戻って行った。
永瀬からの好意に気づかなかった自分に呆れると同時に、そんなことありえないと思う自分がいた。
・
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 136人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ぷぅ∞(プロフ) - sikiさん» コメントありがとうございます！そう言ってもらえて嬉しいです(,,> <,,) (2022年11月3日 23時) (
レス) id: 0b53292451 (このIDを非表示/違反報告)
siki(プロフ) - 好きです。（（真顔））好きです！！！！！！！ (2022年11月3日 8時) (レス) id: 3fe02dba58 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ぷぅ∞ | 作成日時：2021年5月5日 18時
