Case.5 ページ14
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今日は、木曜9時の金融系のドラマを鑑賞している。
いつも通り、隣には健人もいる。
ここで突然だが、私はイケメンに目がない。その中で、好きな俳優ランキングトップ10に入る人が主演をしている。
特に、両親の仇を討つシーンでの涙からの微笑みが超絶かっこいい。
「この綾野剛に抱かれたい」
思わず本音がこぼれた。言ってしまったことを後悔しても、もう取り消せない。
健「え？」
「ん？」
健「何て言った？」
「何も言ってない」
健「そっか……ってなると思ったの？Aは。馬鹿なの？」
「馬鹿じゃないし、馬鹿って言った方が馬鹿なんだ」
健「子供みたいなこと言わない」
健人の呆れた表情を見ると、少し背筋がヒヤッとする。
「ちぇっ」
健「知ってると思うけど、隣に今すぐにでもAのこと抱く準備出来てるイケメンがいるんだけど？」
健人は、顔を真っ赤にして怒っている。
そもそも、私が言う“抱いてほしい”というのは、イケメンに対する1つの愛情表現としてのフレーズであり、綾野剛に本気で抱いてもらうことを想像して言っている訳じゃない。
「さっきのは聞かなかったことにしてよ」
健人が抱く準備は出来ている、なんて生々しい発言したせいで、今後抱かれたい俳優ランキングとか見れなくなっちゃうじゃん。
健「やだ」
「なんで」
健「Aも欲求不満ってことでしょ」
「も、ってことは健人も欲求不満、ってこと？」
健「そうなるかな」
えへっと、照れたように笑う健人だが、今のところ健人とそういう関係にはなりたくない。欲求を満たす仲なんて想像出来ないし、したくない。
意外かもしれないが、私はまだ純真な心を持っているのだ。
健「俺に抱かれるの、嫌？」
私が相当嫌な顔をしていたのか、健人がそう聞いてきた。健人の透き通った目はうるっと揺れた。
その目を向けられて、NOと言える人がいたら教えて欲しいのだけど、今日ばかりは私がNOと言わなければならない。
「やだ」
健「俺のこと嫌いだから？」
「違うけど」
健「じゃあなんで？」
「なんでって、健人とそういうことしたくないし」
健「じゃあ、よくAはテレビの向こう側の人に、触りたいとか抱いてほしいとか言うけど、現実世界でそういうことしたいと思わないわけ？」
今日の健人は、だいぶお怒りのようだ。
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作者名：ぷぅ∞ | 作成日時：2018年8月19日 13時
