九つの音色が雪に溶けるときに Series4

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ab side



〈あっ、あーぷぅ！〉

そこでようやく俺を認識。気づくの遅いよ。

「もう気づくの遅いわ！」

〈ごめんて、許してやぁ〉

なぜ俺と康二が仲良いかというと、もちろん舘さん繋がり。〈後輩だけど仲良い人がいるから、阿部に紹介したい〉という理由で舘さんから紹介されたのだ。意外と馬が合うことが分かり、こうして仲良くしている。
そこで残念なのは康二の想いが一方通行だということ。舘さんは康二を〈仲のいい後輩〉としか思っていないようだ。恋愛スキルが高いように見えて、意外と恋愛初心者だったりする。幼稚園以降、恋愛は全くしていないみたい。
でもこう見ると、舘さんと康二、相性良さそうだし、そもそも康二に向ける舘さんの表情は俺に向ける表情とは違う。なんというか康二に向ける表情は優しいんだよな。まるで愛おしい人を見ているような...。気づいていないようで舘さんは康二を男として悪いとは思ってないと思う。俺の勘だけど。

「それにしてもいいの？今日は2人して仕事は休みなの？」

ふと気になったのはそんなこと。愚痴っている場所は彼らが経営する系列のカフェ。本部出勤の彼らは結構忙しい。数多いるパティシエールの中でもトップの人気を争っているから、休みは少ないはずなんだけれど...。

〈いいんだよ。俺らの他にもパティシエはたくさんいるんだから。いなくても店は持つ〉

〈せやで〜？こうして休みが被ったのはたまたまなんやし、あ〜ぷぅはいつものようにだてに甘えてればええねん〉

「ありがとう、2人とも...」

なんだか2人のおかげで気持ちが楽になった気がする。2人がいなければ俺はこうして立ち直れなかった。

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