九つの音色が雪に溶けるときに Series4

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iw side



「っ、あぁ。ごめん、ちゃんと聞いてるよ？」

『なら、いいんだけど...』

俺の返答に腕を掴んでいた手の力が緩くなる。そこでやっと異変に気づく。普段、阿部は俺とは反対方面へと帰る。こちらの方面にいる方がおかしい。わざわざ俺を追いかけてきたのか？

「阿部、なんでこっちにいんの？お前、俺とは反対方面だろ？まさか俺を追いかけてきたの？」

『そうだよ』

と、冗談っぽく言えば阿部も冗談っぽく返してくると期待していたのに、真面目に返された手前、なんと返せばいいのか分からなくなる。俺も阿部と同じくらい頭が良ければ、上手く切り返すことができるというのに...。口数は多い方だし、口喧嘩となれば、負けることはほぼない。そんな俺が阿部のたった一言でここまで圧倒されるとは思いも寄らなかった。

『俺がここにいるのは照を追いかけるため。それ以外、何があると思ってんの？』

ふっ、とまるで俺をバカにしたように口角を上げて笑う。あぁ、阿部をこんな顔にさせているのは誰なのだろう？俺なんて言わないよ...な？

「...そうだよな。でも、なんで阿部がここにいんの？俺はそれが聞きたい」

そう尋ねれば、先程までの威勢はどこいった、と問いたくなるほど身体を固まらせて、更には顔も真っ赤にして金魚のように口をパクパクさせている。なぁ、なんだよ、その顔。まるで好きな人を前に緊張している乙女じゃねぇか。俺、馬鹿だから期待しちゃうよ...？

3→←必ずや、叶える（末規子様ﾘｸ）〈【叶わない iwab】続編〉

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