Episode183 ファーストキスは涙の味、なんて ページ48
あんなにも動いていた口がぴたりと止まる。
え、なに、なんで？
うるさい？
「……あーあ、Aはいいよなあ。俺の気持ちなんて知らないフリしてさ。さぞかし楽だろうね」
『……ぇ、』
「お兄さま、って甘えれば兄に抱きしめてもらえる。宮廷からいなくなれば国中全部がAのために動く。欲しいものはなんでも手に入る。オマケにあーんな美形の王子に狂うくらい愛してもらって。いいねぇ、幸せだな、お姫様」
彼の言っていることが、よくわからない。
同じ国の言葉なのに、意味が取れない。伝わらない。
彼の意図がわからない。どうしてそんなに突き放したような言い方をするの？どうしてそんなに泣きそうな顔で笑うの？
「結局俺なんかより王子のとこにいた方が幸せだったんじゃねーのかよ。……無理やり攫って悪かったな。そもそも、一国のお姫様が俺みたいな身分の男なんか……」
『ま、まって、落ち着いて、マサキ。そんなことないよ、私、マサキといるの幸せだよ』
刹那、背中に鈍い痛みが走った。
内臓が震える苦しさに思わず呻き声が漏れてしまってから、恐る恐る目を開けると、突然の唇の痛みと呼吸の苦しさとともに、目の前にはマサキの顔が視界いっぱいに広がっていた。
壁に強く押し付けられたのだと自覚するのには、少々時間がかかった。
……そして、あまりにも強引すぎるそれが、初めてのキスだということに気づくのにはさらに時間を要した。
なんにもわかんなくて、頭が混乱して、我慢できなかった一筋の涙が頬を伝う。
嘘を言ったわけじゃなかった。間違いなく、私の本心だ。
だって私はマサキのことが好きなんだもん。マサキを"愛してる"んだもん。
嘘なはずないのに。
酸素が欲しくてたまらないと叫ぶ唇が漸く解放されてもなお視界を埋める彼は、まるで幼子が駄々をこねて泣いているようにくしゃりとその整った顔を歪めていた。
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愛瑠(プロフ) - 豪炎寺晴矢さん» ありがとうございます！この時期は人生最大の多忙を極めているので更新できませんが、春になったらたくさん更新するつもりです。見捨てず暖かい目で見守ってくださると幸いです。 (2018年12月22日 10時) (
レス) id: cf3c21e846 (このIDを非表示/違反報告)
豪炎寺晴矢 - 楽しく読んでいます!!これからも頑張ってください! (2018年12月1日 20時) (レス) id: 0d4b0ee8a9 (このIDを非表示/違反報告)
愛瑠(プロフ) - 詩子さん» 中世〜近世ヨーロッパを意識して書いているので、基本的な歴史の流れなどに矛盾がなるべくないようにやっております。光栄なお言葉ありがとうございます、遅い更新ですが頑張ります！ (2018年9月28日 7時) (レス) id: cf3c21e846 (このIDを非表示/違反報告)
詩子(プロフ) - 私学校で世界史を選択してるんですけどすっごく世界史の中の話みたいで面白いです！これからも頑張ってくださいね。応援してます！ (2018年9月27日 23時) (レス) id: 77572e4f5d (このIDを非表示/違反報告)
とくにないです(愛瑠)(プロフ) - カナメさん» そう言っていただけると本当に励みになります！ありがとうございます！！ (2017年12月19日 16時) (レス) id: 871e7b599c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：愛瑠 | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/baraannzu1/
作成日時：2017年7月17日 7時
