Episode165 馬車 ページ30
蘭様の国――私が嫁いだはずの国が、祖国に宣戦布告をしてからしばらく経った。
ヒロトさんの邸宅に出入りする人が日に日に増え、彼からもあまり邸宅内を不用意に動き回らないようにと言われてしまった。
私とマサキを想ってのことなのだろうが、ここまで行動を制限されるとなると退屈だ。
マサキの部屋のソファで隣に座る彼も、先程から無言かつ無表情で、私と一緒にヒロトさんからもらった子供用の指人形を長い時間無意味に触ったり眺めたりしている。
一方私は、開けてはいけないときつく言われているカーテンの隙間からせめて一瞬でも何か気を引くものが見えないかと小一時間ほど観察している。
うーん、見えない。
カーテンくらいあけたっていいんじゃないだろうか。
そうして悩んでいた時、ふいに外から微かに馬車の音が聞こえてきた。
それはマサキにも聞こえたみたいで、指人形との別世界への旅から帰ってきたのか、はっと顔を上げたが、マサキが口を開くより先に私が窓に飛びつき、ヒロトさんの言いつけも忘れておもいっきりカーテンを開けてしまった。
背後から絶望したようなうるさい声が聞こえるが、そんなことはどうでもいい。
今日は天気が良いらしく、カーテンを開けた室内は外界の太陽の明るさを惜しみなく取り込み、ここ最近の薄暗さはどこかへ行ってしまったみたいだ。
しばらく久しぶりの明るさに細めていた目を窓の外の風景が見たいがために無理やり開けてみると、そこにあったシーンは、蘭様の国の国旗を掲げた黒い品のある馬車が丁度ヒロトさんの邸宅に到着した、といったところのものだった。
「ちょっと、A、マジでやばいからカーテン閉じなよ！あいつにバレたらどうなるか……」
この国の国旗を掲げているということは、王宮の人なのだろうか。
ついに私の身元を――？
そう考えた途端、背筋がゾッとしてカーテンを掴んだままの手のひらにじわりと汗が出てくる。
はやく、閉めなきゃ。見つかる前に。
頭の中で警鐘が鳴り響く。
それなのに私は、縛り付けられたかのように指先まで動けずに、ただ視線だけが、馬車から降りようとしている人に向かう。
馬車から出てきたのは、2人の軍人だった。
一方は水色の長い髪を背中に垂らし、またもう一方はこげ茶色のふさふさした髪が軍帽に収まり潰されている。
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愛瑠(プロフ) - 豪炎寺晴矢さん» ありがとうございます！この時期は人生最大の多忙を極めているので更新できませんが、春になったらたくさん更新するつもりです。見捨てず暖かい目で見守ってくださると幸いです。 (2018年12月22日 10時) (
レス) id: cf3c21e846 (このIDを非表示/違反報告)
豪炎寺晴矢 - 楽しく読んでいます!!これからも頑張ってください! (2018年12月1日 20時) (レス) id: 0d4b0ee8a9 (このIDを非表示/違反報告)
愛瑠(プロフ) - 詩子さん» 中世〜近世ヨーロッパを意識して書いているので、基本的な歴史の流れなどに矛盾がなるべくないようにやっております。光栄なお言葉ありがとうございます、遅い更新ですが頑張ります！ (2018年9月28日 7時) (レス) id: cf3c21e846 (このIDを非表示/違反報告)
詩子(プロフ) - 私学校で世界史を選択してるんですけどすっごく世界史の中の話みたいで面白いです！これからも頑張ってくださいね。応援してます！ (2018年9月27日 23時) (レス) id: 77572e4f5d (このIDを非表示/違反報告)
とくにないです(愛瑠)(プロフ) - カナメさん» そう言っていただけると本当に励みになります！ありがとうございます！！ (2017年12月19日 16時) (レス) id: 871e7b599c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：愛瑠 | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/baraannzu1/
作成日時：2017年7月17日 7時
