五日目 魚と鳥 ページ46
満月の日の二日前、私と隼人は二人で散歩に出かけた。
序盤は晴れていたのだが、徐々に空気が湿っぽくなってきてついに雨が降り始めてしまったので家に引き返すことにしたのだ。
雨をこの肌に感じるのもいつぶりだろうと物思いにふけりつつ、右手に感じる愛しい人の手のぬくもりに浸る。
そんな私とは裏腹に、雨なんか見慣れすぎている隼人の歩く速度はいつもより速い。
なんたって雨なんか降ると思っていなかった今日はあいにく傘を持っていなかったのだ。
"これは家に帰ったらシャワーだな"と忌まわしげに呟く彼の低い声を他人事のように聞き流して、隼人の家の扉に続く階段を上がっていると、数人の話し声が家のほうから聞こえてきた。
同じくそれに気づいたらしい彼は私を守るようにして壁に隠れた。
何に警戒しているのかわからないが、そんなにひそひそしなくてもいい気がする。
「変な奴かもしれないだろ」
『この家は頻繁に"変な奴"が来るところなの？』
「そういうわけじゃないけど……」
『ここまで隠れる必要ないわよ。見て確かめればいいじゃないの』
彼の腕による守護を軽く振り払って壁から顔を覗かせる。
隼人の家の扉の前には、見慣れた顔が三つあった。
『あ……！』
意図せず漏れた声に気づいた彼らがこちらを見る。
彼らは全員目を見開いて固まっていた。
その光景が少し滑稽で面白い。
『隼人、拓人たちが来てる』
拓人、井吹、剣城の三人が扉の前に立っている。
彼らがいるほうを指さして促せば、壁に隠れていた隼人が"どうして"と怪訝そうにしながら階段を昇りきり、扉のほうへ歩いて行った。
「お前ら、何か用か？」
外出中の私たちを扉の前で待つくらいだ。用事があったに違いない。
隼人が彼らに問いかけると、なぜだか泣き出しそうな顔をしていた拓人がはっと我に返ってそれに答えた。
「Aに会いに来た。会いたかったんだ。……どうしても」
予想通りでもあり予想外でもあるその言葉に今度は私が固まってしまったが、残りの二人もその気持ちは同じらしく意志の強い目でまっすぐに隼人を見つめていた。
……いや、睨みあっていると言うのが正しいだろうか。
それは隼人の目が鈍く光っているから。
「Aに何の用だ」
「話がしたい。大した話をするつもりもないが、今会わないともう一生会えなくなる気がしたんだ。……上がらせてくれ」
そう訴える剣城の表情には、稀に見る彼の生々しい感情がにじみ出ているようだった。
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名無しの太郎 - 素敵です！オズロック様に堕ちたらどうなってたのか気になります…！！ (2019年12月5日 22時) (
レス) id: d3b3bddaab (このIDを非表示/違反報告)
愛瑠(プロフ) - ルインさん» 返信遅れて申し訳ありません！はい、改めてよろしくお願いしますね！ (2018年8月28日 19時) (レス) id: 871e7b599c (このIDを非表示/違反報告)
ルイン(プロフ) - こんにちは、【キリサメ】から変えました。【ルイン】です！これからは、この名前で宜しくお願い致します。 (2018年7月8日 13時) (レス) id: a5db77accc (このIDを非表示/違反報告)
愛瑠(プロフ) - 歌紅羅さん» ありがとうございます！しばらく絶望的な更新スピードが続きますが、温かく見守っていただけると嬉しいです。 (2018年7月6日 20時) (レス) id: 871e7b599c (このIDを非表示/違反報告)
歌紅羅(プロフ) - この作品、最高ですね。 これからも頑張ってください。 応援してますよ！ (2018年4月23日 14時) (レス) id: e988874bd3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：とくにないです(愛瑠) | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/baraannzu1/
作成日時：2017年5月7日 16時
