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隼人宅に帰った後、隼人が確かめたところアースイレブンで私のことを忘れてしまったのはさくらと好葉だった。
葵はかろうじて覚えてくれていたみたいだが、彼女だっていずれ私のことなど綺麗さっぱり忘れてしまうはずだ。
こんなの最初からわかっていた。どうってことはない。
――それなのに、さくらのあの時の他人を見るような目が、脳裏に焼き付いて離れないのはどうしてなのだろうか。
家に帰ってからというもの、布団に包まってぴくりとも動かない私を心配してくれているのか、遠巻きに隼人の足音が定期的に聞こえてくる。
わかりきっていたことにいちいち落ち込んでいる己の弱さが憎らしい。
もうすぐ日が暮れる。月が出る。
今宵の月もまた、私の仲間たちの中の誰かを狂わせて、私という存在を彼らから消し去っていくのだろう。
もし、隼人まで私を忘れてしまったら？
ある日突然、さくらが言ったみたいに、私に向かって「誰だ」、なんて言い放ったとき、私はどうなってしまうのだろうか。
この永遠の生のすべてが絶望に染まるに違いない。
彼に忘れられてしまうならいっそ、私の方から忘れたほうがずっと楽だ。
もう傷つくのは嫌だ。
布団の海に溺れながら、不思議と漏れる嗚咽を必死に噛み殺していると、布団越しに愛おしい声が私を呼ぶのに気付いた。
「いい加減出てこい、もう晩飯だ」
言われるままのそりと布団をめくっておぼつかない足で立ち上がる。
目の前の人間は、腰に手を当てて眉尻を下げながら私をじっと見つめていた。
「辛いか」
『いいえ』
隼人が苦笑交じりに息を漏らす。
自分でも呆れてしまうほどに愚かなのはわかっている。
「あのなあ、辛い時は辛いって言うんだよ。人間はそういうふうに生きてる」
『……』
「月の都にいた時の癖で強がっちまうのはわかるけどさ、ほら、今は人間の女の子だって空野に言われたんだろ？自分の思うままに生きればいいんじゃねえの、今くらいは」
じわ、と目の奥から熱いものがにじんだ。
『つらい……みんなが、私を忘れてしまって……つらいわ』
「そうか、辛いな。……おいで、A」
広げられた腕に躊躇なく飛び込めば、頭上から色っぽい笑い声が降ってくる。
愛しい人の胸というのはなかなかどうして私を優しく包み込む。
「俺はどこにも行かねえから安心しろ。俺さえいればいいだろ？」
思い上がるんじゃないわよ、人間風情が。
そんな憎まれ口は嗚咽となって彼のやさしさに溶けていった。
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名無しの太郎 - 素敵です！オズロック様に堕ちたらどうなってたのか気になります…！！ (2019年12月5日 22時) (
レス) id: d3b3bddaab (このIDを非表示/違反報告)
愛瑠(プロフ) - ルインさん» 返信遅れて申し訳ありません！はい、改めてよろしくお願いしますね！ (2018年8月28日 19時) (レス) id: 871e7b599c (このIDを非表示/違反報告)
ルイン(プロフ) - こんにちは、【キリサメ】から変えました。【ルイン】です！これからは、この名前で宜しくお願い致します。 (2018年7月8日 13時) (レス) id: a5db77accc (このIDを非表示/違反報告)
愛瑠(プロフ) - 歌紅羅さん» ありがとうございます！しばらく絶望的な更新スピードが続きますが、温かく見守っていただけると嬉しいです。 (2018年7月6日 20時) (レス) id: 871e7b599c (このIDを非表示/違反報告)
歌紅羅(プロフ) - この作品、最高ですね。 これからも頑張ってください。 応援してますよ！ (2018年4月23日 14時) (レス) id: e988874bd3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：とくにないです(愛瑠) | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/baraannzu1/
作成日時：2017年5月7日 16時
