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「Aちゃんっ……」
絞り出した、という表現がぴったりな切羽詰まった声で我に返る。
いつの間にか校舎裏に到着していたようだ。
足を止めて振り返ると、不安そうにこちらを伺う彼女の瞳と目が合った。
『……葵、』
「ねえ、円堂さんたち、……」
混乱しているのか、食い気味な葵の肩に優しく手を置いて、もう一度はっきりと名前を呼ぶと、今度は彼女が我に返った。
『――あのね、』
"あの人達は私のことを忘れてしまったの"
言えば、喉がきゅうっと締まる。
ああ、この身が裂けてしまいそうなほどの胸の痛み。
きっとあなたも私のことを忘れるのよ。
初めから地上に私の居場所なんかないの。
俯いた頭の上で、静かに葵が息を飲んだ。
『記憶が消されたのが円堂さんたち3人だけだったけれど、明日はどうなるかわからない。月の都の者達は容赦がないわ。明日には葵、あなたが私のことを忘れるかもしれない。もしかしたら隼人かも』
葵は混乱しているのに。何も知らない、ただの少女なのだから、わかりやすく説明しなきゃいけないのに、溢れる激情が抑えられないまま私の口は止まらない。
『明日、アースイレブンのみんなが私のことを忘れていたら？……いや。いやよ。忘れないで。あなたたちと過ごした時間を消さないで……温かい思い出を、どうか私から奪わないで……！』
「Aちゃん……」
『ほんとは、本当はわたし、まだみんなと笑っていたいの。地球のおいしい食べ物の味が知りたい。動物の愛くるしさに触れたい。花の香りを味わいたい。大地を蹴って、思いっきり走り回りたい。普通の人間の女の子みたいに、友達と騒いで遊びたい。日本の四季を全身で感じたい。
あなたと……
みんなと……！』
愛する大地で、愛する人達と、愛を歌いたいと願うことは罪だろうか、悪だろうか、欲深だろうか。
力が抜けた私の、人間味のない白い手はだらしなく彼女の肩を滑り、落ちる。
やるせなさに爪を立てて拳を握れば手のひらに鋭い痛みを感じ、血が流れるがものの数秒で傷が完治してしまった。
「泣かないで、Aちゃん……」
あたたかい手が私の頬に添えられる。
俯かせていた顔を上げれば、柔らかい微笑みがそこにはあった。
泣いてなんかない。
そう思うけれど、目元の水滴を拭う彼女の指があまりにも優しくて何も言えなかった。
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名無しの太郎 - 素敵です！オズロック様に堕ちたらどうなってたのか気になります…！！ (2019年12月5日 22時) (
レス) id: d3b3bddaab (このIDを非表示/違反報告)
愛瑠(プロフ) - ルインさん» 返信遅れて申し訳ありません！はい、改めてよろしくお願いしますね！ (2018年8月28日 19時) (レス) id: 871e7b599c (このIDを非表示/違反報告)
ルイン(プロフ) - こんにちは、【キリサメ】から変えました。【ルイン】です！これからは、この名前で宜しくお願い致します。 (2018年7月8日 13時) (レス) id: a5db77accc (このIDを非表示/違反報告)
愛瑠(プロフ) - 歌紅羅さん» ありがとうございます！しばらく絶望的な更新スピードが続きますが、温かく見守っていただけると嬉しいです。 (2018年7月6日 20時) (レス) id: 871e7b599c (このIDを非表示/違反報告)
歌紅羅(プロフ) - この作品、最高ですね。 これからも頑張ってください。 応援してますよ！ (2018年4月23日 14時) (レス) id: e988874bd3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：とくにないです(愛瑠) | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/baraannzu1/
作成日時：2017年5月7日 16時
