第266話 ページ17
そっと頬を撫でると、ぴくりと隼人の瞼が反応し、まずいと思ったときにはもう遅く、逃げる暇もないまま彼の目は開いてしまった。
寝起きで微妙に開ききっていない目は、おぼろげな意識の中で確かに私を捉えて、かすかに驚きの感情が垣間見える。
「……A……？なんでここに……」
『……様子が気になって……体調はどう？』
「あ、ああ……」
どうやら、まだ混乱しているようだ。
記憶が戻ってから初めて二人きりになり、お互い何を話せばいいか、話すことが多すぎて逆にわからず困惑したような気まずい空気が部屋に流れ、隼人も私もまるで山奥の生活しか知らない人が突然宮殿に連れてこられたようにぎこちない。
不意に降りた沈黙を破ったのは、隼人だった。
「……あの、さ。俺、頭が混乱して……前世の記憶が戻って、でも今の俺の記憶もちゃんとあって……考えたんだ、どっちが俺の本当の記憶なのかって」
『……私は貴方にひどいことをしたわね。無理矢理記憶を甦らせて、結果的に貴方を苦しめている……私は何も変わっていないわ』
「いや、Aは悪くない。違うんだ。そうじゃない。……思い出せて、よかったんだ。嬉しいんだ。だって俺は、Aとあの時約束したから。迎えに行くって誓ったんだ。それなのに俺は全部……！」
『隼人』
どこか遠くの方を見ながら――きっと、私のいない地上で苦しみ続けた日々を見つめながら、苦しさに顔を歪ませ始めた隼人の手をおもむろに握り、名前を呼びかける。
はっと現実に意識が戻ったらしい彼は、らしくもなく目に涙を溜めてロボットのような動きで顔をこちらに向けた。
『私は隼人のことが好きよ。隼人が好きなの。昔の隼人も好きだし、今の隼人も好き。私は隼人のすべてに恋をしたのよ。あの記憶は事実だけれど、この時代に地球に貴方が生まれて、スパイとして地上に降りた私があなたに出会って、恋をしたこの記憶もゆるぎない事実なの。……好き。大好きよ、隼人』
「……A、は……今の俺も好きだっていうのか……」
『ええ、そうよ。昔は昔の貴方に恋をしたし、今は今の貴方に恋をしてる。もちろん、今も昔の隼人のことは好きよ。……なんていうか、今も昔も関係ないのよね。全部に恋をしてしまったから』
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名無しの太郎 - 素敵です！オズロック様に堕ちたらどうなってたのか気になります…！！ (2019年12月5日 22時) (
レス) id: d3b3bddaab (このIDを非表示/違反報告)
愛瑠(プロフ) - ルインさん» 返信遅れて申し訳ありません！はい、改めてよろしくお願いしますね！ (2018年8月28日 19時) (レス) id: 871e7b599c (このIDを非表示/違反報告)
ルイン(プロフ) - こんにちは、【キリサメ】から変えました。【ルイン】です！これからは、この名前で宜しくお願い致します。 (2018年7月8日 13時) (レス) id: a5db77accc (このIDを非表示/違反報告)
愛瑠(プロフ) - 歌紅羅さん» ありがとうございます！しばらく絶望的な更新スピードが続きますが、温かく見守っていただけると嬉しいです。 (2018年7月6日 20時) (レス) id: 871e7b599c (このIDを非表示/違反報告)
歌紅羅(プロフ) - この作品、最高ですね。 これからも頑張ってください。 応援してますよ！ (2018年4月23日 14時) (レス) id: e988874bd3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：とくにないです(愛瑠) | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/baraannzu1/
作成日時：2017年5月7日 16時
