第250話 ページ1
全てが焼け落ちた後、私と隼人は地面に座り込んでいた。
フィールドには、静寂。
いや、確かに静かではあるが、幾つか泣いているような嗚咽が混ざっている。
さっき見たのは、今から1000年と少し前、人間として地球に堕とされ、贅沢な生活をしていた姫である私と、ただの貧しい農民だった隼人と身分違いの恋に落ちてしまった時の記憶。
……私は、あの時彼に出会い、彼に抱いた愛、その記憶さえも失っていたのだ。
どうして。考えるまでもない、月人の仕業だ。
私ひとりの感情や記憶を消すことなんて、月の都の技術をもってすれば容易いこと。
あの記憶は、今はもう跡形もなく消えてしまった鳳凰が見せてくれたのだろう。
……すごく熱くて、苦しい思いをした気がする。
周りを見渡すと、誰しもが目を見開き動揺を隠せないで呆然としていて、中には涙が止まらないといった様子の人もいた。
このみんなの反応からして、みんなも同じものを見たのだろうか。
そして、視線をバレないように目の前の人間に向けると、心臓がおおきく跳ねるのがわかった。
愛しくて恋しくて会いたくて仕方がなかった人。
状況がまだちゃんと理解出来ていないのか、呆然としている。
『……ぁ……』
こんな時、なんて言ったらいいのだろう。
今までに感じたこともない複雑すぎる感情が私の全てを支配して、嬉しいのか悲しいのか切ないのか、何もわからない。
見ているのが辛くなって、彼と目が合う前に俯いた。
頭が痛い。
痛いのは頭だけではない。心だって痛い。
そんなの、理由は簡単だ。
私はあんなに大切なことを忘れていたからだ。
いくら月人にそうなるように仕向けられたとはいえ、ずっと待っていると約束した、この世で一番愛おしい彼のことを忘れていたのだ。
それだけではない。
私は、彼を忘れただけでは留まらず、悪魔に魂を売ってしまった……！
オズロックに好きな様に操られ、この純潔の身を捧げるだけでなく、あろうことか今までずっと一緒にいた大切な仲間に敵意を向けてしまったのだ。
自分がやってきたことを次々に思い出していく。それと同時に、頭の中がかき混ぜられるような目眩と、自分の内臓を噛み潰してやりたいほどの後悔でいっぱいになった。
ごめん、ごめんね隼人。みんな。私は最低だ。
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名無しの太郎 - 素敵です！オズロック様に堕ちたらどうなってたのか気になります…！！ (2019年12月5日 22時) (
レス) id: d3b3bddaab (このIDを非表示/違反報告)
愛瑠(プロフ) - ルインさん» 返信遅れて申し訳ありません！はい、改めてよろしくお願いしますね！ (2018年8月28日 19時) (レス) id: 871e7b599c (このIDを非表示/違反報告)
ルイン(プロフ) - こんにちは、【キリサメ】から変えました。【ルイン】です！これからは、この名前で宜しくお願い致します。 (2018年7月8日 13時) (レス) id: a5db77accc (このIDを非表示/違反報告)
愛瑠(プロフ) - 歌紅羅さん» ありがとうございます！しばらく絶望的な更新スピードが続きますが、温かく見守っていただけると嬉しいです。 (2018年7月6日 20時) (レス) id: 871e7b599c (このIDを非表示/違反報告)
歌紅羅(プロフ) - この作品、最高ですね。 これからも頑張ってください。 応援してますよ！ (2018年4月23日 14時) (レス) id: e988874bd3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：とくにないです(愛瑠) | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/baraannzu1/
作成日時：2017年5月7日 16時
