第132話 ページ7
目が覚めた時、私の目の前にあったのは隼人の顔だった。
『……わあっ！』
「あだっ」
『あ、ごめん』
おどろいて飛び起きると、至近距離にあった彼に頭突きしてしまい、鈍い音が響くと同時に大きく隼人がのけ反った。
いや、おかしいでしょ。
近いんだってば。
『近い』
「いや、よだれついてたから面白くてつい」
『うそっ！』
急いで口元をぬぐおうとすると、彼は「嘘だよバーカ」とおかしそうに笑った。
『てめえ……』
「はいはいごめんごめん。それで、A仕事はどうしたんだよ。帰ってきたら寝てるしびびったんだけど……どうした？」
『……あ……』
覚醒した意識に思考がやっとついてきて、思い出す。
やばい、ご飯作ってない。
それどころか洗濯物も畳んでない。
『ごめん！私何もしてないね、今からご飯作るから！』
急いでベッドから出てキッチンに向かおうとしたのだが、不思議なことに世界が反転して、おかしいなと思ったときにはもう遅く、体から一気に力が抜けて座り込んでしまった。
「A！」
『っ……なん、で……』
めまいが酷い。
頭もいたいし、尋常ではない眠気と倦怠感、そして吐き気が私を襲う。
「動くな寝とけ！今日は何もするなよ、絶対だからな！」
眉間にしわを寄せながら私を抱き上げ、口調とは真逆に優しく再びベッドにおろす。
「ごめんね」というと、彼は軽く私の額を指で弾いて、弾いたところにそっとキスをした。
「いいから寝ろ。な？俺は今から薬局行って買い物してくるから待ってろ」
『うん、ありがと……』
「じゃ、行ってくる」
眩む視界の中で、どこまでも優しい隼人を見送ると、部屋は私一人になって耳に痛いほどの静寂が降りる。
その静寂は、完全に回復した意識を妙に働かせた。
この唐突な体調不良は何だろうか。
恐らく熱はないし、喉が痛いわけでもないから風邪とは考えにくい。
時期的に生理がもうすぐ来るはずだが、今まで経験した生理前の症状とは少し種類が違うし、ここまでひどいものではなかったため、生理前だからというのも当てはまらないだろう。
隼人が帰ってきてご飯が用意されてないなんて状況にしてしまったことへの罪悪感が胸にくすぶり、若干の自己嫌悪にも陥ってくる。
一人の時の静けさは、無駄なことまで考えてしまうな。
明日くらい病院に行こう。
そんなことを考えながら、隼人の帰りを待っていた。
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莉央夏 - 続きが気になりますー！ (2021年8月18日 8時) (
レス) id: e85eafe245 (このIDを非表示/違反報告)
さっちん - コメント失礼します。また更新停止になっていますが大丈夫ですか？これから先どうなるのか気になります！更新してくださいね。 (2020年10月9日 22時) (レス) id: 9ffba0b2d2 (このIDを非表示/違反報告)
もちもちにゃんこ(プロフ) - ずーーっとまってます！いつか続きが見れると信じて！ (2019年9月1日 0時) (レス) id: 5f0e397fd7 (このIDを非表示/違反報告)
愛瑠(プロフ) - はーちゃんさん» ありがとうございます！勉強のせいで更新が遅くなってすみません……がんばりますので見守っていただけたら幸いです (2018年6月29日 15時) (レス) id: 871e7b599c (このIDを非表示/違反報告)
愛瑠(プロフ) - みるみるさん» あああ優しいお言葉ありがとうございます…！更新遅くてごめんなさい！かならずいつか完結させますので応援していただけると嬉しいです。 (2018年6月29日 15時) (レス) id: 871e7b599c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：とくにないです(愛瑠) | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/baraannzu1/
作成日時：2016年3月12日 3時
