. ページ2
「もうこんな時間！？クッソ……もう時間ないってのに……無駄にしちまった」
頭を抱えてうずくまる隼人が懸念しているのは、やはり私と彼の間に残された時間のことだろう。
今日を過ごしたら、明日の夜には私はここからいなくなる。
そのことが二人の頭に同時に浮かび、重苦しい雰囲気が漂った。
「……A、昨日は悪かった。止めてくれなかったら、俺はあいつらに手を上げてた……」
『そうでしょうね。あんな隼人、初めて見たもの』
「Aが選んだのは俺だったけどさ、あいつらだってAを心から好きだったはずなんだ。俺と同じように……なのに簡単に忘れやがって、俺はそれがどうしても許せなかったんだよ……！」
『仕方ないわよ。彼らの思いなんて関係ないんだから。どんなに強い思いがあったって、そんなの……』
「わかってる！！」
昨日を想起させるような突然の怒鳴り声に、図らずも肩が揺れる。
それに気づいた隼人は小さくごめんと言うが、なおも続けた。
「そんなこと、わかってんだよ……でも俺は許せない。理屈じゃねえ。Aが好きだと言ったその口でAに向かって誰だなんて言ったのが、俺は……！」
『そうね、そうよね……隼人、泣かないで……私、貴方に泣かれてしまったらどうしていいかわからない……』
彼が、彼らがそうしてくれたように、今度は私が抱き寄せて頭をなでる。
泣かないで、笑っていて。
なんて、厳しいお願いだってことはわかっているけど、私を抱き寄せて慰めてくれた仲間たちや愛しい彼は、きっとそう願いながら私の頭を撫でたはず。
「ははっ、子どもみたいだ……」
『私からしたらみんな赤ん坊みたいなものよ』
「それじゃAは婆さんだな」
『なっ……違う！』
あ、笑ってくれた。
久しぶりに見た心からの笑いにつられて、私も一緒に肩を揺らして笑った。
笑っているうちに、こみ上げるものがあった。そのまま目頭が熱くなって、笑い声は次第に嗚咽に変わる。だけれど私たちは、笑うのをやめなかった。涙が流れても、息が出来なくても、嗚咽がこみ上げても、意地を張っているかのように絶対笑顔をやめなかった。
このまま一緒にいれたらいいのに。
ねえ、月読命。
そう思うのは罪なのかしら。
続く
お気に入り登録で更新チェックしよう!
最終更新日から一ヶ月以上経過しています
作品の状態報告にご協力下さい
更新停止している| 完結している
←六日目 人
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 181人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
イナイレ好き - この小説めっちゃ好きです続き楽しみにしてます (2021年8月11日 0時) (
レス) id: 573d988362 (このIDを非表示/違反報告)
匿名希望 - オズロックさん堕ちエンドも見てみたいです…！あなた様の小説が大好きです！これからも頑張ってください！応援しています！ (2020年10月7日 17時) (レス) id: d3b3bddaab (このIDを非表示/違反報告)
愛瑠(プロフ) - ルインさん» ありがとうございます！ (2020年9月14日 16時) (レス) id: 871e7b599c (このIDを非表示/違反報告)
ルイン(プロフ) - 続編、おめでとうございます！ (2020年9月14日 15時) (レス) id: 8454e672a1 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：とくにないです(愛瑠) | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/baraannzu1/
作成日時：2020年9月14日 4時
