40 ページ40
.
完全にこの会議室がソンさんの色に染まって、和やかな雰囲気になっていた。
あまり認めたくはないが、この人はすごい人なんだと思わざるを得なくて。
そして俺みたいな立場が偉そうに言えなかった”この素晴らしい資料はAさんが作っている”ということを、ソンさんに言われてしまったことが何よりも悔しくて悔しくて仕方がなかった。
「Aちゃん、この資料すごい見やすいね。冗談抜きで本当にこの資料みんな褒めてるよ」
それぞれの発表が終わり、次の作業に移っているときだった。
俺とAさんとで作業を進めようとしていたところにソンさんがAさんに話しかけた。
「それは、恐れ多いです…」
「この資料、営業のときにそのまま使わせてもらおうと思ってる。一個だけ資料の内容で聞きたいことあるんだけど今いいかな?」
「あ、うん。大丈夫」
「ごめんねチョンくん、ちょっとAちゃん借りる」
「、はい」
ソンさんの多少の下心が見え隠れしているようにも思うが、ソンさんがAさんと資料の内容について話し始める。
話の内容はもちろん仕事のことなので、Aさんも嫌がることなく真面目な会話をしている。
時折資料の覗いて笑い合うような場面も視界に入ってしまって、何ともやるせない気持ちだった。
私情を除けば、ソンさんは本当にすごい人なんだと思う。
俺は営業なんて絶対に向いてないから、俺にないものがこの人にはたくさんある。
仕事こそ一緒にしていなくても、この立ち振る舞いや周りからの信頼を見ればどれだけできる人かなんて一目瞭然だった。
ここでAさんに頑張りを見せるチャンスだったのに、全部持っていかれてしまったような。
俺の小ささを思い知ってしまった。
「…あの、チョンさん」
「……?あ、すいません、」
「すみません、作業中に。ちょっとこの部分のことで確認したいことが、」
「あ、はい」
いつもの打合せメンバーにいる、ここの会社の今年の新入社員の女性。
美味しいところのお店をたくさん知っていて、この前も情報提供してくれた人。
確認された部分を説明すると、理解したように大きく頷いた。
.
218人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「BTS」関連の作品
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:SLY | 作成日時:2019年5月23日 13時