25 ページ25
.
念のため出来上がった資料を持って席を立ち事務所を出て廊下に出て歩き回っていると、その予感は的中していた。
「俺ひとりじゃないんだって」
「それでも私は行かないよ。何回も言わせないで、」
「そんなこと言うなよー、頭固いね相変わらず」
「ねえもう仕事戻っていい?」
「話し終わってないけど?」
この一週間前の朝に訪ねてきたソンさんという男の人。
そして明らかに困っているAさんが人気のない廊下の隅でこのような会話を交わしている。
何の話をしているかはわからないけど、誘いに断ったらしつこくされているというのは何となくわかった。
そしてAさんが困っているということも。
「…あの、Aさん、」
「!?ジョングクくん、」
「すみません、お取込み中のところ。急ぎの書類できたのでチェックをお願いしようと思って。ユンギヒョンに探してこいって言われて」
「ユンギ…、あ、そっかごめん今行くね」
ユンギヒョン、Aさん、嘘言ってごめんなさい。
そして俺が嘘を言っていることも、Aさんはすぐに理解したらしい。
「また連絡するから」
「その話はもう終わりです」
そう言ってAさんはソンさんから解放されたようにそそくさ事務所に戻る。
「キミ、ゴメンね。仕事中に」
「あ、いえ」
Aさんの背中を追おうとした俺にソンさんは人当たり良く笑顔でそう言う。
けれど目の奥は邪魔されたことへの苛立ちも見て取れた。
ソンさんの目の奥の真意は見逃さなかった。
.
218人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「BTS」関連の作品
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:SLY | 作成日時:2019年5月23日 13時