嶋﨑さん家の長女 (ページ21)

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姉についてページ21

斗亜side

斗亜のお姉ちゃんは女優だ。

斗亜が物心ついた頃から、Aちゃんはずっとテレビに出ている。

いつもいつも、ずっと笑顔で。

家にいるときも、外にいるときも、テレビの中でも
Aちゃんは笑顔でいる。

でも、ある日。

斗亜「Aちゃん？」

「あ、斗亜、」

斗亜は初めてAちゃんの涙を見た。

「早かったんね、今日帰ってるの」

斗亜「うん･･･、今日はお昼で帰りやったから」

「そっ、か、」

斗亜「Aちゃん、」

どうしたの？

どうしてもこの一言が言えなかった。

Aちゃんが抱え込んでいるものを聞いたところで、斗亜は何の役にも立たない。
Aちゃんの相談相手にもなれない。

Aちゃんを笑顔にすることもできない。

そう思っていた。
そう思い込むしかなかった。
だって斗亜はただの弟。

でも、その考えは違っていて。

斗亜「っわ、Aちゃんどうしたん」

気づいたらフワッと何かに包まれている。

「ふふ、斗亜あったかい」

よく見たら、斗亜はAちゃんに抱きしめられていた。

斗亜「･･･っ、Aちゃん？」

「私な、斗亜にくっつくとな、嫌なことも悲しいことも全部吹っ飛ぶんよ」

斗亜は私のお薬で癒しなの、そう言いながら笑うAちゃん。

あぁ、そうだ。
Aちゃんを守れるのは斗亜だけなんだ。
そう確信した日。

斗亜のお姉ちゃんは女優だ。

斗亜の、大切で、大好きで、守りたいお姉ちゃんの名は、
Aちゃん。