・ ページ5
「みんな、私の周りしか見ない。見られているのは本当の私じゃないんです」
粉々になった鈴蘭の上に、水滴が落ちる。
「本当の私は、もっと醜いんです。正座で座りたくない、美しい言葉も使いたくない。営業スマイルだって疲れるし、なにか仕出かす度に嘘をつく。この花だって、貴方じゃなかったら落ちていたと嘘をついた」
完璧に見えたその花は、全く違うようだった。
形をつくってそこに無理やり押し込まれ、言われるがままにその形になる。
「ふざけんな...なんで私がこんな王族に生まれなくちゃなんねーんだ。恵まれてるだと？冗談も大概にしろ、平民の方がよっぽど恵まれてるだろうが。結婚だって私の為じゃなくて国のためだろうがよっ...」
人間らしくなって、酷い言葉を使って。
嗚呼、そっちの方がいいな。
堅苦しくて生真面目な貴方より、何倍も。
「いいんじゃね、頑張って作りゃあその分素の自分が楽だろ」
俺も普段の感じで話しかける。
涙が流れる頬に一つ口付けを。
「頑張るのは外だけでいいだろ」
囚われている位なら、そのなかでは囚われているふりをすればいい。
自由にやりまくって王族追放されるくらいがいいだろう。
「結婚しよう。それで終わり」
許嫁、なんてものじゃ俺らは縛れない。
「...今すぐ、結婚したい」
泣き顔でそう頼まれては困るよ。
俺はそばにあった鈴蘭を無理やり、酷く摘み取って手渡す。
「俺と結婚してください」
「...はい」
今宵、月の下で美しく輝く鈴蘭の中。
「じゃあ、誓いのキスを」
凝り固まった貴方をほぐし、そして俺のものに。
さあ、この夜から逃げてしまおうか。
*
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 607人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
黒酸塊(カシス）(プロフ) - やまうみ。さん» え、じゃあタメでいきますよ…？？これからリクエストするかもです、その時はタメで話しますね(このコメントすらタメではない) (2019年10月18日 17時) (
レス) id: 55ecacd765 (このIDを非表示/違反報告)
やまうみ。 - 氷牙さん» 好きすぎる() ありがとうね、よし、君は今からお友達だっ！(誰目線) 続編でもよろしく、リクエストは何でも待ってるよ！ (2019年10月18日 7時) (レス) id: e8e6962fde (このIDを非表示/違反報告)
やまうみ。 - 黒酸塊(カシス）さん» えぇ?!いやいや、まず神作者じゃないですからいいんですよ?!遠慮しないでタメ口でいいですよ！ (2019年10月18日 7時) (レス) id: e8e6962fde (このIDを非表示/違反報告)
やまうみ。 - フェレットさん» あっ、ありがと(ﾊｧﾄ)← これで相思相愛か、結婚しよ((( 結婚はしないけどこれからもよろしくね！ (2019年10月18日 7時) (レス) id: e8e6962fde (このIDを非表示/違反報告)
氷牙 - やまうみ。さん» いちからひゃくまで〜のファンです！いつもいつも自分のマニアックなリクエストにも答えて頂けて嬉しいです！ 自分もやまうみさんとお友達に是非なりたいです！ (2019年10月17日 22時) (レス) id: 990e5cc797 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
