祀り姫は宿儺の器に成り代わる【呪術廻戦】

34章、開幕のベルが鳴る ページ36

｢芻霊呪法……共鳴り！！｣

瞬間、呪いは針に刺されたように
空中で消え去った。それを見た五条が笑う。

｢いいね！ちゃんとイカれてた。｣


｢あんたその子がいるのなんでわかったの？
しかも……私の術見破ってた?
あんた本当にただの素人?｣

釘崎の問いに彼女は抱いていた子供を下ろすと言った。

｢んー……ちょっと呪いに好かれすぎちゃう素人?かな？｣

｢はあ？ふざけてんの？｣

｢ふふっ……そのうちわかるよその前にこの子連れて帰らなきゃね?｣

｢そうね……｣

釘崎は、子供に視線を移し撫でた。
そんな釘崎を見て彼女は興味深げに言った。


｢野薔薇ちゃんは優しいね……
ねえ野薔薇ちゃんはなんで呪術師になったの？｣


｢はあ？優しくなんかないし……田舎が嫌で東京に住みたかったから！！なったの！！｣

釘崎の解答に彼女は子供を見つめる。

｢そう言いながら命かけれてるのってすごいね……｣

｢掛けられるわ！私が私であるためだもの！｣

釘崎の目は芯が強くまっすぐだった。
その目に悠里は苦笑いを浮かべる。

｢やっぱり優しいよね野薔薇ちゃん｣

｢だから優しくない……｣

｢明るい未来の見える方を迷わず選択できるのは……優しい人だけなんだよ……｣

彼女の目に釘崎はさらに彼女の存在がよくわからなくなった。
彼女はおそらく自身より強い
素人だと思うのに何故あんなに動け、こんなに
大人びているのだろうか、
釘崎は、不思議でたまらなかった。
釘崎の思いなど知らず彼女は、ふわりと先程とは違う笑みで手を差し出した。

｢改めてよろしくね。野薔薇ちゃん！｣

その笑みに
釘崎は、昔別れた友達を重ね思う。
あの子も優しくて眩しい子だったと
だからか、それとも彼女の出す不思議な空気のせいか、釘崎は彼女の手を恥ずかしそうに
握り返した。

｢名前で気安く呼ばないで……ま、まあよろしく｣

｢ふふっ｣

ビルを子供を連れでて、五条と伏黒に子供を渡し任務後の楽しくご飯を食べる話を釘崎達が始める中、悠里だけがこの後起きる事件を知っていた。

あと2週間だね……伏黒くん、野薔薇ちゃん
一緒に居れるの……
そしたらしばしのお別れが来る。

2018年……7月の記録
西東京英集少年院運動上上空
特級仮想怨霊その受胎非呪術師数名を目視で確認緊急事態の為高専1年生3名派遣
そのうち1名死亡

まあ……死なないけど……ただ少しさみしいね
彼女はみんなの後ろを少し歩きながら
小さく呟く。

｢さあまた新しい物語の開幕だね……｣

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