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するとラウールが呼んでくれたタクシーがすぐに来てくれて、
俺はふらつきながら乗り込んだ。
何事もなく普通にタクシーが走行していると、
横を救急車が通り過ぎる。
大きなサイレンを鳴らしながら。
そしてその後ろからパトカーが2、3台。
どちらも急いでいるようだった。
「何かあったんでしょうかねぇ…」
タクシーの運転手が心配そうな目で見つめる。
すると、急にタクシーが止まった。
「…ん？」
「すみませんお客さん。
この先なんか通行止めみたいで…
先に進めないんですけど…」
さっきの救急車の音がする。
ってことは、やっぱり何かあったのだろうか。
こんな日に…ついてないな。
仕方ない。歩いて帰ろう。
ここから家まではそう遠くない。
「すみません、じゃあ降ります」
運賃を払って、俺はタクシーをおりた。
うわー相当混んでんな…
時間が遅いから人通りは少ない。
いるのは痺れを切らした運転手達と車だ。
列を連ねる眩いランプを横に、
俺は一人ゆっくり歩いていた。
やっぱり少し寒い。
酒で火照った頬を痛風が突き刺す。
思わず手で覆った。
少しはマシになったが、
まだ完全に酔いは覚めていない。
ふと向井先輩のことを思い出した。
あれからどうしてるんだろうな。
どうせ向井先輩の事だから、
高そうな店行って、
美味しいもん食べて、
夜の街並みを歩いて、
ロマンチックなイルミネーションとか見て、
ベンチに座ってプレゼント渡して…
とりあえずイチャコラし倒してんだろうな。
酔ってるくせに、
想像力だけは旺盛だった。
こんな俺とは住んでる世界が違う。
向井先輩にはちゃんと愛する人がいる。
大切な人がいるから。
「なーんで向井先輩の事ばっか考えてんだろーなー」
ふとそう思った。
やっぱ飲みすぎたか。
早く帰って明日に備えて寝よう。
そう思い歩む足を早めたその時、
信じられないものを見てしまった。
さっきの救急車。
パトカーが止まっている。
渋滞の原因。事件現場。
驚くべきなのはそこじゃない。
そこに立ち尽くす一人の男性。
.
向井先輩だった。
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作者名：涼夏〈ﾘｮｳｶ〉 | 作成日時：2020年8月16日 21時
