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「はーい…」
なんて不貞腐れて、
肩をしゅんとおろしてデスクに戻って行った。
「…ふっ」
なんかその姿がちょっと微笑ましくて、
つい笑ってしまった。
本人には絶対内緒だけど。
向井先輩は宣言通り残業しまいと猛スピードで仕事を終わらせ、
足早で帰って行った。
心なしか足取りが軽そうだったな。
そりゃ恋人と会うからか。
「いいですね〜…向井先輩」
ラウールが羨ましそうにそう呟く。
「ラウールは彼女いないのかよ」
「いるわけないじゃないですか。
俺がどんだけ不器用か知らないんですか？」
ラウールは顔もいいし運動神経もいいしスタイルもバツグン。
人当たりもいいはずなのに、
そこだけがダメなんだよな。
女子を目の前にするとこいつはすぐ黙り込む。
緊張するんです、って言うけど、
お前みたいに顔がよけりゃ
ちょっとぐらい無口だって彼女ぐらい出来るだろ。
なんて、本人には言わないけどさ。
「まー…まだ彼女作るの早いんじゃね？」
「目黒先輩、それ中学生のセリフです。
目黒先輩こそ彼女とか作る気ないんですか？」
彼女…ねぇ…
欲しいと思ったことは無い訳では無いが、
別にいなくても困らない。
クリスマスシーズンとかになると、
ちょっと不機嫌なだけだ。
窓から見える外の景色と、
満月の月を片目に俺はひとつため息をこぼした。
「…俺には多分できねーよ」
この性格を理解してくれる子に、
この先出会える自信がない。
分かっていることだ。
「ラウール、今日つき合え」
「え！俺この頃金欠なんですけど〜…」
「俺が奢るから」
「やったー！」
なんか、
一人で過ごしたくなかった。
強がる自分とは裏腹に、
明らかに寂しさを覚えてる自分がいる。
なに今更…
酒でも飲んで忘れよう。
なんせ今日の夜は冷え込むそうだからな。
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作者名：涼夏〈ﾘｮｳｶ〉 | 作成日時：2020年8月16日 21時
