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「あ、すいません」







向井先輩は俺の三つ上で、



ここの部署では歳の近い上司だ。







「ただ、石になりたいっていう気持ちは分かるわ。





俺の将来の夢石やってん」







そう冗談じみた声で言って、



関西弁の訛りが入った向井先輩の声がその場に響き渡った。






全くこの人は。



綺麗な顔立ちでスタイルもよくて、




その上ものすごく頭が切れる。



黙ってたら女子からはモテモテなのに。






蓋を開けたらこれだもんな。








「共感しないでくださいよ向井先輩!




もー…目黒先輩この資料自分でやってくださいね」






「はいはい分かったよ」







一定の音程で一定のリズムで




ほぼ投げやりで返事をした。









「じゃ、俺取引先行ってきます」







そう言ってラウールは席を外した。





あたりのデスクを見渡すと、




ほとんど残っている人はいないようだ。








ここの営業部は人数が少なく、



この時間帯ともなればほとんど外に出ていて



いつも残っているのはデスクワーク多めな俺と、



部長と資料整理の責任者の向井先輩ぐらいだ。






「向井先輩、これ手伝ってくれません?」





「絶対嫌や。今日残業できひんし」







やはり拒むだろうとは思っていた。





その理由も何となく分かる。







「彼女さんとですか?」

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作者名:涼夏〈リョウカ〉 | 作成日時:2020年8月16日 21時

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