【アイナナ】mirage【大神万理】 (ページ9)

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Re:03 ページ9

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恐ろしいくらい失礼な男がやってきた。

覚える不快感と相容れぬ気配。
ひどく顔の整った男がこちらを見据え、なにひとつご尊顔を崩さず言ってのけた失言の数々に貼り付けていた笑顔が更に張り付くのがわかる。

なんだ。このくっそ失礼な男は。

「なに。なにか言いたければ言ってくれていいよ」

昔から喧嘩を売られれば迷わず買っていた。
逃げるなんて性に合わないし、自分の正義感に反することが起こっていたのなら黙ってやられているなんて絶対になかったし。きっとこの先もないだろう。

だから、ついこの時、元ヤンの血が騒いだ。
魔が差したともいう。
万理に猫を被っていたことはとうにバレていたが、ヤンキーだったことまでは明かしていない。

けれど。

「それで、万。この女、誰」

「お前が名乗れ、このクソ野郎」

恐ろしいくらい低い声がでた。
威圧感のある、それでいて敵を見るかのような鋭い視線。
突き刺さるその視線はどう考えたって女子高生のそれではない。

「アンタ、初対面の相手にそういう態度とってきたわけ。悪いけど、私は許してやるつもりないから。生憎、沸点は低くてね。売られた喧嘩は買う主義なんだわ」

今思えば思い出深い出会い？といえばいいのだろうか。
唖然とし、その後なにを思ったか口元に手を持っていきそのまま固まってしまった男。
言い返されると思っていなかったのか、予想外の事実だったのか。

このくらいで黙るくらいなら突っかかってこなければいいのに。
一昨日きやがれ。

ぐらいまで、思った矢先。

「店長、鉄パイプ」

「……ご、ごめん」

慌てて謝る男に憤慨したのは言うまでもなかった。
びびって謝られたってなにも嬉しくなかったからだ。
確かに脅すような形になったかもしれないが、それでも、正義はこちらにある。

そう思ったからなにも後悔なんてしない。

「お客様。お気をつけてお帰りくださいませ。背後には気をつけろよ、クソ野郎」

笑顔で言い切った、やりきった。
そして出て行った背中を見送った後に我に返ったのだ。

「………」

やってしまった。
やらかした。結構ここの仕事は気に入っていたのに、またやめることになりそうだと溜息をつく。

「大変失礼致しました」

まずは店内のお客様に頭を下げ、そして裏手に繋がる扉を開き座り込む。

「あー、やば。涙でそ」

顔を伏せ、ひとり呟くそんな時分。
最悪な誕生日になりそうだと、ひとり後悔するのだった。